彼女は某超難関大学の学生を青田買いした。社会人の時に年下の現役大学生と交際を始めたのだ。彼の就活の時には自分が知り得る情報や人脈を駆使して就職をサポート。彼は無事大手企業への内定をゲットした。

ただそれだけでは終わらない。

その数年後、彼女は外資系大手企業への転職を彼に促し年収を倍以上に跳ね上がらせるステップアップの転職をさせたのである。

その華麗なる手腕はまさにトップブリーダー。彼の実力を上手に引き出して、彼女の理想のハイスペへと育て上げたのである。

彼の転職を祝う会と称して彼女の両親と食事会を開催し、そこで親から「結婚するんだよね？」と詰めさせることで彼に結婚を決めさせたところまで完璧に彼女の筋書き通り。
デスノートの夜神月以上に「計画通り」のセリフが似合う女は彼女しかいないだろう。

一方の彼女は伊勢丹のような一流デパート、というよりはセブンイレブンのような女だった。

絶世の美女というわけではない。だがいつも笑顔で愛嬌があり、彼女が嫌な顔をしているのを私は見たことがない。２４時間営業の自然な笑顔が彼女をキラキラと魅力的にしていた。その笑顔にはなんでも受け止めてくれそうな安心感がありとても話しやすいのだ。そこにはデパートのような敷居の高さはなく、コンビニのように気軽に飛び込んでいける雰囲気があった。

笑顔は勉強やダイエットのように努力や積み重ねがいらない、誰でも瞬時に無限に使える最強の武器なのだと彼女は教えてくれた。

その安心感から時に不快な話題を振られることもあった。そんな時もにっこりと微笑みながらさらりと受け流し、持ち前の頭の良さからウイットに富んだ返しで場の空気を変える技にも長けていた。

トークにおいてもコンビニのような女だった。
話題の引き出しは抜群の品揃えを誇り、なんでも取り揃えていた。そこに頭の回転も相まって、どんな話を振られてもすぐさま打ち返すことができるのだ。前述の笑顔と雰囲気で相手のガードを緩めてから、話題豊富なトークでどんな相手とでも一瞬で打ち解ける。

なぜそんなに色々なことを知っているのか聞いたことがある。

少しでも気になることがあればすぐに調べるけれど、実際のところ自分もそんなに多くを知っているわけではない。サッカーならこのチーム、あの作家ならこの小説と、そのジャンルの一分野だけでも少し深く語れるとまるでその分野に精通しているかのように見える。広く浅いだけで多くを知っているように見えるだけだと。

その後島田紳助さんの動画で彼が話術のひとつとして同じようなことを言っているのを見て、あぁトークのプロと同じ技を彼女は知らず知らずのうちに駆使していたのだと感心した。

それにしても元来好奇心が人よりも強い女性なのだと思う。なんにでも興味を持つし、自分の知らない知識を持つ相手に出会えば、上手に会話を広げながらどんどんと質問をして知識を自分の物にしていた。そしてまたひとつ話題の品揃えを増やしていくのである。

「今日の合コン相手は退屈だな……」という時でも彼女は絶対に笑顔を絶やさなかった。というより、自ら盛り上げて本当に楽しむことで笑顔になっていた。

「せっかく同じ時間を過ごすなら、つまらなく過ごすより楽しんだほうが自分の人生が充実するでしょ？」

セブンイレブンいい気分♪のように、彼女といると皆がいい気分になるのだ。

飾らない笑顔、知識、頭の回転にトーク力、さらにユーモアのエッセンス、そこに圧倒的なポジティブさが加わり強烈に彼女は輝いていた。
もちろんそんな彼女は常にあらゆる男性からアプローチを受け続けていたし、その中でもハイスペックでとても素敵な男性と数年前に結婚をした。彼女のマインドは学ばされることが多く、私も今でも教訓にさせてもらっている。

圧倒的な行動力に基づく飛込み営業で一人を捕まえた女、筋書き通りに理想の男に育て上げた女、コンビニエンスストアのように全方位に刺さる魅力で多くに愛され選んだ女。

そんな「無理めな男を落とした」3人のお話。

初出：2019.1.2