一家のロードムービーと麻薬密売のギャップが笑える
正直、DVDレンタルでしかリリースされないような映画だと思っていました。
言ってしまえば、キャストだって日本では知られていない人ばかり。なのに、どうしてこんなに楽しめて笑えてドキドキするのか。
観客から大絶賛を浴びたのが納得できます。それでいて、批評家からバッシングを受けたのも頷けるゲス&下品さで、むしろ観る者を楽しませる一心で作られた内容に感動してしまう。
“家族”というウソをデヴィット一味と観客だけの秘密として共有し、次々とだまされていく人々の姿に笑い、バレそうになるスリルにハラハラします。
麻薬を持って帰る道すがら、一つの本物の家族がフレンドリーに接近する。そこで本物の家族とウソの家族が並ぶと、より一層ウソの白々しさが際立つ。
見つかりそうになった麻薬の箱をとっさに布で包み、「よしよし、いい子いい子」と赤ん坊に見立てるローズの“お母さん”っぷりには爆笑です。
完全武装したメキシコの危険地帯をキャンピングカーが走っていくシーンは、あまりにもシュール。コワモテの麻薬密輸関係者さえ“家族”にだまされ、恐ろしい連中を尻目に、何事もなく平和が素通りしていく構図が見事なのです。
誰もが“幸せそうな”家族・カップルを演じている?
4人は当初お金目的で嫌々ながら家族を演じていたけど、次第にお互いを本物の家族のように接していくことになる。
デヴィッドとローズはケニーの恋を全力で応援し、ケイシーの帰りを本気で心配している自分に気づく。
ダメでゲスな4人があらゆる困難を一緒に乗り越えていき、次第に結束力が高まっていく。“家族”としてのある種の成長が垣間みれる様は可笑しいけど、ちょっぴり感動すら覚えるのです。
“家族”って、実は誰もが演じられるもの?むしろ本当の家族のほうが嘘くさく、違和感を覚えてしまうことだってあるでしょう。
旅先で出会った夫婦は、「セックスに新鮮味がなくなった。どうすればいい?」と切実な悩みをデヴィッドとローズに打ち明ける。それは、デヴィッド一家が幸せそうな家族に思えたからでしょう。
街には至る所で“幸せそうな”カップルや家族を見かける。でもそれは“幸せ”とは限らない。“幸せ”を演じているのかもしれない。周りからしたら本物もウソも関係ない。
『なんちゃって』なのは、果たしてどちらなのでしょうか。