ハエだからといってナメてはいけない!容赦なき復讐劇

マッキー 映画 ハエ インド ラブストーリー S・S・ラージャマウリ ナーニ スディープ サマンサ アンプラグド たけうちんぐ 2012 Varahi Chalana Chitram. All rights reserved.

 終始、プ~~ンと鳴っている。
これがどうロマンチックになるんだよ。そう疑問に思うのも仕方ありません。
でも、ときめくのです。ジャニの一途な恋心と、たとえ小さな身体でも愛する人を守り抜く姿に。だけど、やっぱりハエです。

 とはいえ、ただのハエじゃない。ハエがジャニであることを知ったビンドゥは彼の復讐に加担し、マイクロアートの才能を使ってハエの身体に“装備”を与える。いわばスーパーハエ。
何から何までバカバカしいのに、なぜか熱いこの復讐劇が、たまらなく面白いのです。

 とにかく、その復讐の手段がアイデアに満ち溢れている。夜にスディープの耳元で飛び回って不眠にさせる。散髪屋にヒゲを剃ってもらっている最中に飛び回ってケガをさせる。車の運転中に目の中に飛び込んで事故を起こす。全部がいちいち陰湿すぎて笑えるのです。

 スディープがハエの正体がジャニであることに気付いても「ハエが俺に復讐しに来る」と言ったら周囲からノイローゼ扱い。しまいには、コワモテのボディーガード全員にハエ叩きを持たせるシーンは壮観。
思わずスディープに同情してしまうくらい、容赦ない復讐の連続に恐れおののいてしまいます。

驚異の“ハエ視点”のVFXとインド映画の魅力が全開

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 インド映画は、1995年制作『ムトゥ 踊るマハラジャ』で底抜けに楽しいスタイルを全世界に知らしめた後、近年では『ロボット』でまたトンデモ映画的魅力を見せ付けました。
その最大の特徴はやはり、歌と踊り。

 ジャニがビンドゥに想いを伝えるシーンはミュージカル。これは分かります。彼女の近くでラブソングを歌う姿は当然ロマンチックです。
が、ハエになってもミュージカル。これは何なんですか。ハエが歌って踊るって何ですか。もはや「リアリティがない」なんて言葉はこの映画には通用しません。それでも「これはラブストーリーですから!」と強引に突き進む。
細部までVFXの技術が行き届いているからこそ、映画の持つ圧倒的なパワーが爽快なのです。

 ジャニが生まれ変わってしばらくは“ハエ視点”の映像が続く。少しの水が洪水に、小さな子どもは巨人に。ハエが感じ取る世界では人間のセリフがない。
このサイレント映画的手法がユニークで、後に最大の敵・スディープが現れると人間視点に切り替わり、いかにジャニが小さな存在であるかを痛感する。そして、ビンドゥがいかに美しくて心優しいのかがよく分かる。
ぶっ飛んだ設定の映画でも、凝りに凝った演出があるからこそ心に残るのです。