デートの食事に吉野家は、確実に「なし」でしょう。
だけど、この二人の場合はどうか。高級料理店ではない。そこに美しい夜景もない。
平凡な食事と平凡な公園で肩を並べる平凡なサラリーマンと盲目の女性との恋愛が、どうしてこれほどまで美しいのか。
なぜなら二人は許されない恋をしているから。
親によって引き裂かれ、吉野家で隔たれた向かい合いの席で、泣きながら牛丼を食らう現代のロミオとジュリエットなのだから。
2013「箱入り息子の恋」製作委員会
こちらのロミオは、真っ暗な部屋に閉じこもって格闘ゲームに熱中。友達はペットのカエルのみ。挙げ句の果てに、35歳でいまだ童貞。
「ああ、貴方はどうしてロミオなの」というよりは「てか、なんでお前がロミオなんだよ」って憤る感じです。
一方、ジュリエットは目が見えない。お金よりも地位よりも人柄を求める。この絵に描いたような天使は、過保護な父親のせいで本当の愛を知らない。
そんな軟禁状態の家から連れ出すのが、まさか35歳の童貞だなんて……。
俳優だけでなく文筆家、歌手として幅広く活動する星野源と、『天然コケッコー』などでその瑞々しい魅力を世間に知らしめた夏帆の二人が、あらゆる障害を乗り越えて恋を育むカップルを熱演しています。
特に星野源のジメッとした表情と言動の演技は必見。星野源への百年の恋も醒めるほど陰鬱で内気で無愛想なサラリーマンが、恋によってその姿を変えていく過程は劇的です。
監督は、若手監督の中でも最も期待されている市井昌秀。
星野源演じる健太郎の両親に平泉成と森山良子、夏帆演じる奈穂子の両親に大杉蓮と黒木瞳といった豪華なキャスティングで、現実と衝突するからこそますますヒートアップする純愛模様が描かれています。