ストーリー

 市役所に勤める健太郎(星野源)は、内気で愛想がない。毎日、自宅と職場を往復するだけの日々で恋愛をすることもなく、彼女いない歴=年齢の更新を続けている。
そんな彼を見かねた両親は“代理見合い”を通じて、裕福な家庭の一人娘・奈穂子(夏帆)を紹介する。彼女の目がまったく見えないことを知らずに……。
健太郎は奈穂子と知り合い、はじめての恋をする。
奈穂子の父の反対を押し切って恋の感情を爆発させる健太郎だが、二人には思わぬ困難が待ち構えていた――。

目に見えるものがすべてではない?

箱入り息子の恋 市井昌秀 星野源 夏帆 平泉成 森山良子 大杉漣 黒木瞳 キノフィルムズ 2013「箱入り息子の恋」製作委員会

 健太郎は恋愛映画の主人公にはふさわしくない。
満員電車で埋もれていく個性であり、職場ではいてもいなくても気づかないほど空気。多くの女性がスルーしてしまう男なのです。
そんな彼が恋愛映画で主人公になってしまうと、どうなるかというと…。

 それはもう、退屈な日々の連続。
自宅と職場の往復。仕事中はパソコンをカタカタカタカタ。家では死んだ目で格闘ゲームを続ける。画面には『YOU WIN!』と出るが何にも勝っていない。
それがまさか美しい奈穂子と出会って変貌するのだから、人間をここまで変える恋は、なかなか捨てたもんじゃないです。

 誰もが無視してきた健太郎の姿は、奈穂子の目にはどう映ったのか。
もちろん目が見えないから映ることはないけど、彼女の父が重んじる結婚相手の条件=名門大学出身・威勢がある・野心的からすべて外れている健太郎の優しさに触れ、奈穂子自身も本当の意味でのはじめての恋をする。

 デートをしても、その目には吉野家も平凡な公園も見えない。
見えないからこそ場所とは無関係に、健太郎と一緒にいることの居心地の良さを心で感じ取る描写が胸に迫るのです。
一方、目が見える健太郎は、美しい奈穂子に一目惚れするというその単純さがちょっぴり悲しいけど、恋愛映画の主人公になれないはずの彼が恋の感情を爆発させる姿には、心が動かないわけがないのです。

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