ストーリー

 18歳のインディア・ストーカー(ミア・ワシコウスカ)は、繊細で感覚が研ぎ澄まされた女の子。
誕生日に最愛の父は不審な死を遂げ、その真相をひそひそと噂する声が彼女の耳に聞こえてくる。学校では孤立し、母のエヴィ(二コール・キッドマン)とも心を通わせず、誕生日に手に入れた謎めいた鍵だけが彼女の手元にある。
やがて、長年行方不明だった叔父のチャーリー(マシュー・グード)とともに暮らし始めるインディアとエヴィ。その後、周りで次々と人が消えていく不可解な事件が起きていく――。

感性が鋭いのは得か、損か…
少女の限りない五感に、血と暴力の影が忍び寄る

イノセント・ガーデン パク・チャヌク ミア・ワシコウスカ ニコール・キッドマン マシュー・グード 20世紀フォックス映画 2012 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

 先に申し上げておくと、この映画には甘酸っぱい恋どころかトキメキのトの字も存在しない。
それどころかインディアが劣悪な男の欲望によって危険に晒され、自分が少女であることを呪う。

 チャーリーは何を企み、インディアに接近するのか――。
謎が一つずつ明るみになっていくスリルの中で、インディアは恐ろしいほどに表情を変えない。それでも心の動きは目とセリフと行動で示され、その一挙一動に目が離せない。

 物事に鋭く感じるインディアの姿に、かつて少女だった頃に抱いていた感情を思い出すだろう。
だけど、彼女は繊細であっても決して弱くはない。学校で男子にちょっかいを出されても動じず、家で母とまともに会話ができなくても、どこかたくましさを感じる。
内気で周囲に馴染めず、常に居場所を探していた女の子なら誰もが見覚えのあるシーンがたくさん。
その中でインディアは真っ直ぐに一枚の絵を描くように前を見つめ、健気に生きている。その姿には妙な憧れすら抱くかも知れない。

 そして終盤に差し迫る頃、ある事件が起きる。
その固まった表情が一気に崩れ、感情が爆発する。それが一発の銃声に集約されたとき、観る者が今の今まで大事に温めていた繊細な記憶すら、粉々に吹っ飛ばされてしまうのです。