名声なんていらねえよ、ローマ

ローマでアモーレ ウディ・アレン アレック・ボールドウィン ロベルト・ベニーニ ペネロペ・クルス ジュディ・デイビス ジェシー・アイゼンバーグ エレン・ペイジ ロングライド GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo Philippe Antonello

 この映画で描かれるのは、あらゆる“名声”とそれに運命を左右される人々です。
分かりやすいのは、レオポルドの生活の変わり様。これまで十分幸せに暮らしていたのに、有名人になった途端、プライバシーは侵害され、ストレスが溜まる日々に。
でも、美女には喜んでしまうのが男の悲しい性。で、人気が無くなったらあっけなく忘れ去られちゃうんです。

 終盤、小悪魔女子モニカがあっけなく名声にすがりつく姿。これにはジャックだけでなく、観る人すべての開いた口が塞がらないでしょう。でもその口は大きく開いたまま、絶え間なく笑い声を吐き出す。情けなくも“名声”に翻弄される人々に吹き出してしまうんです。
“名声”が提供する人生はあっけない。
サラッと注目されてコロッと忘れ去る。残酷なくらい、人々は次の話題に移り変わる。
ここでアレンの観察眼が鋭く光る。恋も人生も、“名声”でいとも簡単に変わってしまうことのおかしさをラブコメディに盛り込んでいる。

 有名人なんて気軽に外に出歩けない。そんな自由が利かない生活で、恋と人生を謳歌できるのか。
週刊誌には男友達と二人で歩いているだけなのに『不倫』だとか、夜食買うために化粧せずにコンビニ行っただけで『劣化』だとか。ほんと煩わしいったらありゃしない。有名人が決していいものとは限らないのです。

 4つの物語で起きる数々のスキャンダルを、まるで週刊誌のページをパラパラとめくるように小刻みに見せてくれる。
ボーッとしていたら横からわき腹を突いてくる。くすぐられるように笑わされる。
そして、その週刊誌のページの末尾に書かれているのはハッピーエンドなのだろうか。
それは映画のラストシーンで確認してください。

 ウディ・アレンは分かってる。人間、名声も地位もそれほど必要ないってことを。
あ、でもやっぱり注目されたいけどさ、ってことも。うん、でもやっぱりイケメンや美女に囲まれたいな、ってことも。
って結局どっちなんだよ、ってことも。
この映画に笑えるなら、あなたも大体分かってる。本当の幸せとは何たるかを。
ジャンカルロみたいにシャワー中にフフフ~ン♪と優雅に歌ってることこそが、何よりも幸せであることを。

ローマでアモーレ ウディ・アレン アレック・ボールドウィン ロベルト・ベニーニ ペネロペ・クルス ジュディ・デイビス ジェシー・アイゼンバーグ エレン・ペイジ ロングライド GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo Philippe Antonello

6月8日(土)より、新宿ピカデリー&Bunkamuraル・シネマ他にて全国ロードショー!

監督:ウディ・アレン
キャスト:ウディ・アレン、アレック・ボールドウィン、ロベルト・ベニーニ、ペネロペ・クルス、ジュディ・デイビス、ジェシー・アイゼンバーグ、エレン・ペイジ
配給:ロングライド
原題:To Rome with Love/2012年/アメリカ・イタリア・スペイン合作映画/101分
URL:映画『ローマでアモーレ』公式サイト