70歳を超えた今も精力的に恋愛映画を撮り続けている、巨匠ウディ・アレン。
おじいちゃんがラブコメ作るってどうなの。若干狂気じみたその創作意欲は一体どこから来ているのでしょうか。
1970年代から近年の作品まで、彼の映画に登場する三人の“どうしようもない男”にスポットを当てました。みんなイラッとさせてくれるけど、なぜか愛せる男たちなのです。
神経質な男は、不器用ながらも女を愛し続ける『アニー・ホール』
一本目は、1977年にアカデミー賞作品賞を受賞した恋愛映画の金字塔。ウディ・アレン映画の原点とも言える、神経質で鬱陶しい主人公を自ら演じた彼の人生観や恋愛観が詰まった作品です。
ストーリー
スタンダップ・コメディアンのアルビー(ウディ・アレン)は離婚経験を経て、美女のアニー(ダイアン・キートン)と出会う。意気投合した二人はたちまち恋に落ちるが、相手の嫌な部分が見えてきて次第に距離が生まれる。やがてアニーは人気歌手から誘いの声がかかり、二人は離れ離れに――。
ユニークな演出表現で描かれる、男女の恋愛観
演出がとにかく面白い。時折カメラ目線になり、恋愛のあらゆる場面で「こういうとき、どうします?」と観客に女々しくいちいち尋ねてくる。わたしゃあんたのカウンセラーなのかよって言わんばかりに。しかし、これによって物語と観客との壁は破られ、まるで映画の中に入り込んだような感覚に陥ってしまうのです。
アルビーとアニーの出会いの場面では互いの心の声が文字に表れます。芸術論を語り合いながら、アニーは心の中で「バカに思われたくない」と呟き、一方、アルビーは「裸にしてみたい」って呟く。ほんと最低です。こんな感じで男と女の違いが顕著に表れ、大胆な手法にいちいちギョッとさせられます。
アルビーの場合:自分を入会させてくれるクラブには入りたくない
神経質で頑固なアルビーは、女性からの好意を「自分を入会させてくれるクラブには入りたくない」と拒む。もったいないですね、何様なのかと。アニーに対しては独占欲が膨らみ、幾度となく衝突する姿はとにかく情けない。
それでも、アニーと別れてからずっと立ち直れないのは、不器用ながらも本当にアニーを愛していたから。二人が愛し合っていた頃のアルビーの「ただのラブでは言葉が弱い。“ラァーブ”だ」というセリフは、いきなり可愛くてドキッとする。ロマンチックな夜景を背景にしたこの素直な告白に、グッときてしまう人も少なくはないはず。
『アニー・ホール』DVD
2012年11月16日発売(発売中)
2002年7月5日レンタル開始(レンタル中)
価格:1,490円(税込)
社名:20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン