荒々しい息遣い。ぶつかる肉と肉。絶え間なく鳴り続ける喘ぎ声。汗と体液が飛び散り、指は肉体に埋もれる。
容赦なく叩き込まれる性描写の数々。
それでもポルノ映画にさせないのは、セックスから心の闇が表れるから。変えられない過去を、今変えようともがく姿が胸を打つ。
原作は2001年の直木賞候補にもなった石田衣良の同名小説。2016年には三浦大輔演出・松坂桃李主演で舞台化され、このコンビで今年映画へと舞台を移し返り咲く。
主人公・領を官能の世界へ導く女性専用コールクラブの代表・静香を元宝塚歌劇団の真飛聖、領がセックスの試験で相手をする耳が聴こえない少女・咲良を園子温監督『アンチポルノ』で体当たりの演技を見せた冨手麻妙が演じる。
セックスシーンが「面白い」
「女なんてつまらない」と自分本位のセックスしかできない領に、“情熱の試験”の終了後に静香は不合格を言い渡す。
「私はあなたのセックスを認めない」
まるでカンフー映画の師匠のようだ。冷静に考えるととんでもないセリフであるが、これをしっくりこさせる映像美が恐ろしい。
物語の半分近くがセックスシーンという印象が残る。とはいえ卑猥ではなく、一つ一つのシーンが光と陰で美しく切り取られている。そしてセックスシーンが性的欲求を満たすというより、新しいエンターテイメントとして昇華されている。とにかく面白いのだ。痛々しくも切なくもあり、時に笑いを誘いもする。肉体がぶつかり合う音は銃撃戦のように迫力があり、入り乱れるカットの連続に息をするのも忘れるくらい没頭する。
セックスシーンが「エロい」「美しい」以外に、新たな価値観を生み出された。潮吹きも射精もあらゆるディテールを容赦なく叩き込むことで、とにかく「面白い」のだ。特に西岡徳馬のシーンは鑑賞後の話題を独占する、娯楽要素満載のセックスに仕上がっている。
領がどんなに貪り食うように絡んでも品を感じるのは、松坂桃李だからなのだろう。そのメランコリックな眼差しはいくら本能的に腰を振っても、どこか切なさを感じる。
プレイボーイ然とした佇まいではなく、女性から飛び込んでいきたくなるような「普通」さがあるから、領が女性から多く指名されるのも頷ける。
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