刻一刻ともう二度と戻らない時間を過ごしていく中、その一瞬一瞬を疎かにしてしまう。
言葉が見当たらないまま、秘めた想いを一生そのままにしてしまっていいのだろうか。
言葉が次々と下から上へスクロールされていく時代だからこそ、千年生き続ける短歌の取り札をはじく、高校生たちのもう二度と戻らない“一瞬”を見逃してほしくない。
2100万部を超える大ベストセラーになった漫画『ちはやふる』が、2016年に『上の句』『下の句』と2部作として実写映画化。大ヒットを記録して2年が経ち、広瀬すず、野村周平、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希と瑞沢かるた部のキャストたちがそれぞれのキャリアを育みながら、同じメンバーで返り咲きをする。
かるたの非凡な才能を持つ新役・新田真剣佑、史上最年少のクイーンで強烈な印象を残す詩暢役・松岡茉優らも続投し、そこに賀来賢人、清原果耶、優希美青、佐野勇斗ら新キャストも登場。完結編にふさわしい豪華メンバーで、Perfumeの主題歌のタイトル『無限未来』の通り、限りない未来へと突き進んでいく。
「運命戦は、運命じゃない。」
いつも一緒にかるたで遊んでいた幼なじみの千早、太一、新。家の事情で引っ越してしまい、かるたから遠ざかっていた新が千早と太一の情熱に触れることで、自分も高校でかるた部を作り、全国大会で戦うことを決意する。
『上の句』『下の句』でチームワークの大切さを伝え続けてきたことをひっくり返すかのように、太一はかるたから距離を置いて一人になろうとする。千早への想いを隠しながら新の千早への恋心を知り、大学受験を控えた将来の不安を募らせ、自分が本当にやりたいことは何なのか悩み続ける。
恋愛に進学に、高校生活最後の一年は心が忙しなく狼狽えて、周りと自分を比べる緩い地獄を多くの人が経験するだろう。そんな心の迷いに翻弄されながら、太一は一人きりになって自分を見つめ直す。
競技かるたに「運命戦」という状況がある。自陣・敵陣ともに残りの札が一枚ずつになる試合を指し、どちらの札が先に読まれるかという運命に委ねられることである。しかし、「運命戦は、運命じゃない。」と、千早、太一、新たちをずっと見守る原田名人がこうアドバイスをする。その言葉通り、競技だけじゃなく自分自身に課せられた運命を、太一は自らの手で変えようとする。
青春を一直線で過ごせる人は幸せだ。千早のように一つの気持ちのまま突っ走ることができる人なんて限られている。『結び』は葛藤をし続ける太一がクローズアップされ、“青春映画から外れた”迷いを抱えることで、より多くの人から共感を得られるテーマになっている。
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