恋愛は快感が得られる分、副作用が恐ろしい

「ナラタージュ」宣伝画像③ 2017「ナラタージュ」製作委員会

 少女漫画原作の恋愛映画でありがちなことが、ヒロインを奪われた脇役の男がいとも簡単に諦めて、想いを寄せていたはずの彼女の新たな恋愛を応援すること。

 そういう意味では、葉山への嫉妬心に蝕まれる怜二(坂口健太郎)の描き方がありがちな綺麗事を消し去ってくれる。彼は恋愛映画ではあくまで“脇”の悪役として描かれがちだろう。だが、本作では怜二の後輩を思いやる一面も、実家では気のいいニイちゃんであるという一面もきちんと映し出される。

 誰もが容赦なく性質を炙り出され、善も悪も取っ払って感情的にさせてしまう。恋人を大切にすればするほど、裏目に出ることがある。快感が得られる分、副作用が恐ろしい劇薬のようだ。

 欲望が先走りして、何が正しいか分からなくなって、自分のことが嫌いになる。脇の甘い恋愛映画がないがしろにしていた、“脇”に全く甘くない恋愛の最も核となる部分を本作は容赦なく切り取っている。

「恋愛は素晴らしい。」なんて映画作品が謳う時代は、もう終わったのかも知れない。
「恋愛は素晴らしい。だけど苦しくて死にそうになる。でも素晴らしいところもあるっちゃある」と、この作品は変えてくれるだろう。

ストーリー

 大学2年生の泉(有村架純)は高校時代の恩師・葉山(松本潤)から電話がかかり、演劇部の卒業公演の参加に誘われる。

 高校生の頃、学校になじめなかった泉に演劇部を勧め、救ってくれたのは葉山だった。密かに想いを寄せていた泉は、卒業式の日の葉山とのある思い出を胸に秘めていたが、再会することで抑えていた感情が蘇っていく。

 そして葉山もまた、泉への複雑な気持ちを抱いていた――。

10月7日(土)全国ロードショー

監督:行定勲
原作:島本理生(「ナラタージュ」角川文庫刊)
キャスト:松本潤、有村架純、坂口健太郎
配給:東宝、アスミック・エース
2017年/日本映画/140分

Text/たけうちんぐ

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