深く傷付かないと、それは恋愛じゃない。松本潤×有村架純×行定勲で描く正真正銘の“恋愛”映画『ナラタージュ』

「ナラタージュ」宣伝画像① 2017「ナラタージュ」製作委員会

 思い通りにいかない。失恋は心を抉られる。そのすっぽりと空いた穴を埋めるように、誤魔化すように“余生”を過ごす。
そこには歓び以上に哀しみが身を覆い、決して綺麗事では済まされない。

 ヒロイン次第で世界が思うように動くような、ご都合主義の恋愛映画にウンザリしている方に朗報です。
このヒロインたちは深く傷付き、嫉妬に苦しみ、大泣きする。これは現実世界の恋愛に真っ向勝負で挑んだ、正真正銘の“恋愛”映画です。

 作家・島本理生が20歳の頃に書き下ろし、今もなお恋愛小説のマスターピースとして名高い原作の映画化企画を、10年あまり温めてきた行定勲監督が満を辞して実現させた。

 監督に「10年待った甲斐があった」と言わしめる、『陽だまりの彼女』以来4年ぶりの映画主演となる嵐の松本潤、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』の有村架純と理想的なキャストが集結した。

恋愛偏差値が試される、“壊れる”恋愛模様

「ナラタージュ」宣伝画像② 2017「ナラタージュ」製作委員会

「壊れるくらい、あなたが好きでした。」

 ――本作のキャッチコピーの通り、一生に一度の全身を焦がすような恋愛がここでは描かれる。が、そこに甘さがまるでない。観る者の恋愛偏差値が試されるかのように、キャラも性質も吹っ飛ばして本当に“壊れる”姿がそこにある。

 泉(有村架純)が高校時代、居場所を高校時代の恩師・葉山(松本潤)に見つけたように、葉山もまた隠し切れない自らの弱さを、泉に支えてもらった。
恋なのか情なのか、性愛なのか信頼なのか。判別できない心の有様のまま、互いに惹かれ合う姿が曇天の雨とともに映し出される。

 ベストキャストとしか思えない。松本潤は逞しさとともに、どこか陰を含む危うさが滲み出す。一方、有村架純は不安定な少女を匂わせながらも、力強い眼力で頼り甲斐のある演劇部の先輩として佇む。

 キャラクターたちがたった一面ではなく、多面的なものとして捉えられている。頼る者・頼られる者の関係性が時に逆転し、泉は母親のように葉山の弱さを受け止め、葉山は子どものように弱さを見せる。