14歳のアナログな“性”春が持つエモーション

たけうちんぐ 映画 14の夜 足立紳 犬飼直紀 濱田マリ 門脇麦 和田正人 浅川梨奈 SUPER☆GiRLS ガダルカナル・タカ 光石研 2016「14の夜」製作委員会

 ここまでおっぱいに切実な想いを感じる作品は初めて。タカシはおっぱいを揉むと世界が変わる。革命が起きる。人生が良くなる。それを本気で信じている。きっと揉めば不良から慕われて、仲間から敬まれて、この最低な世界から解放される。その本気は引きで見るとシュールでバカバカしいが、寄って見ると、涙が浮かぶほど必死なタカシがいる。
単なる男の子の性欲を超えて、誰からも鼻で笑われるような情熱に触れる。おっぱいに手を伸ばそうとする14歳の少年に、ここまで胸が熱くなるとは思わない。

「ほら、揉めよ!」「揉め!揉めよ!」「うおおおお!」…こんな字面からはまるで想像ができないエモーションが、映像の中で炸裂する。男の子がいかにおっぱいにロマンを感じているかが手に取るように分かる。
テープが擦り切れたVHSはもう再生できない。実家の押入れの奥底にひっそり身を潜めている思い出のように、それはDVDやブルーレイでは決して味わえない。14歳のアナログな“性”春を、ぜひスクリーンで感じ取ってみてほしい。

 この作品がまたクリスマスイブに公開初日を迎えることが素晴らしい皮肉に思えてくる。
その日が聖なる夜ならぬ“性”なる夜であるからこそ、他人からバカにされても必死に突き進むタカシの想いが成仏できるだろう。

ストーリー

 1987年の田舎町。中学生のタカシ(犬飼直紀)はダサい父・忠雄(光石研)が鬱陶しくてたまらない。町を歩くと絡んでくるヤンキーたちが嫌いで、何よりも鬱屈したこの日常が嫌い。それでも、隣に住む同級生のメグミ(浅川梨奈)が気になっている。柔道部の仲間たちと町に一軒しかないレンタルビデオ屋に入り浸り、悶々とした日々を過ごす。

 そんな中、AV女優の“よくしまる今日子”がサイン会にやって来るという噂を耳にする。「深夜0時を過ぎると、おっぱいを揉ませてくれるらしい」大きな夢を抱いて駆けつけるが、タカシは思いもよらない事態に直面する――。

12月24日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

監督・脚本:足立紳(『百円の恋』
キャスト:犬飼直紀、濱田マリ、門脇麦、和田正人、浅川梨奈(SUPER☆GiRLS)、健太郎、青木柚、中島来星、河口瑛将、稲川実代子、後藤ユウミ、駒木根隆介、内田慈、坂田聡、宇野祥平、ガダルカナル・タカ/光石研
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
2016年/日本映画/114分/PG-12
URL:公式サイト

Text/たけうちんぐ