愛を感じたことはあるか?

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 本作の原題は“LOVE IS STRANGE”。その名の通り、愛は時折歪な形になるかもしれない。奇妙にも思われたり、偏見を持たれることもある。
だが、ベンとジョージはいたって普通の人々だ。普通だからこそ、人生の岐路に立つと迷い、パートナーに寄りかかり、泣き崩れることだってある。どこにでもいる弱くて脆い人だ。その身近なキャラクターが親近感を持って観る者に問いかけてくる。

「愛を感じたことはあるか?」

 この問いかけの答えを担うのがジョーイ。友達作りが下手で、愛情表現を苦手とする彼は、ベンからこう尋ねられた時はっきりと答えられなかった。だが、スケートボードに乗って颯爽と町を駆け抜けていくジョーイの姿から希望が見えてくる。

 本作で結婚をハッピーエンドに描かなかった理由は、このラストシーンに込められているのだろう。ジョーンが光の中へ消えていく姿は眩しく、限りない未来へ突き進んでいくように見えるからだ。
愛について本当に大切なものは何か。それをショパンの音楽に乗せて、静かに訴えかけてくるのです。

 若い頃は何でも許されてきただろう。夢を見ても誰に責められることはないが、やがてみんな歳を取る。現実と向き合うことになる。
そんなとき、ベンとジョージが二人並んで歩いていく姿を思い出せば、どこか肩の荷が降りて、励まされるかもしれません。
年齢を重ねないと決して記せない、交際39年目の“愛の教科書”に勇気をもらえるはずです。

あらすじ

 ニューヨークのマンハッタン。39年間連れ添ってきた画家のベン(ジョン・リスゴー)と音楽教師のジョージ(アルフレッド・モリーナ)は念願叶って結婚した。周囲から祝福され、二人の幸せな生活は順風満帆にスタートするはずだったが……。
同性同士の入籍が理由でジョージは仕事をクビになり、住む家を失った二人は別居することになる。ベンは親戚の家に移り住むことになり、肩身の狭い居候生活を余儀なくされる。
年老いた二人に現実問題が次々と容赦なく降りかかってくるが、ベンとジョージは互いに理解し、ありのままの自分を愛してくれる人の存在に改めて幸せを感じるのだった――。

全国公開中!

監督:マイラ・サックス
キャスト:ジョン・リスゴー、アルフレッド・モリーナ、マリサ・トメイ、ダーレン・バローズ
コムストック・グループ (配給協力:クロックワークス)
原題:LOVE IS STRANGE/2014年/アメリカ映画/95分
公式サイト:『人生は小説よりも奇なり』

Text/たけうちんぐ