交際39年目の現実!同性婚カップルが直面した『人生は小説よりも奇なり』

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 ラブストーリーと聞くと、最近よくある人気少女コミックの美男美女カップルによる恋愛映画が目に浮かぶあなた。
いやいやいや、あんなのはファンタジーでしかない。まずありえない。夢を見させられた分、後で現実に蝕まれて苦しむ。それより、現実を思い知った後に、夢を抱ける映画のほうがよっぽど実用的です。
ファンタジーのような恋愛は、現実を通り過ぎた後にこそ育まれるもの。それに気づかせてくれる、ベンとジョージのゲイカップルが主人公の作品です。

 全編、ショパンやベートーベンといったクラシックの名曲が静かなピアノで鳴り響く。画家のベン役に『愛と追憶の日々』のジョン・リスゴー、その相手・音楽教師のジョージ役に『スパイダーマン2』のアルフレッド・モリーナ、ベンの親戚の女流小説家に『いとこのビニー』でアカデミー賞助演女優賞に輝いたマリサ・トメイと、実力派の名優が名を連ねる。
『あぁ、結婚生活』のアイラ・サックス監督が洗練された演出で、彼らのドラマを優しく丁寧に紡ぎ出します。

年輩の二人から学ぶ“愛の教科書”

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 交際39年目にしてようやく結婚。幾多のハードルを乗り越えた同性婚の成就は、祝福するように美しいオーケストラが流れ、ハッピーエンドで幕を閉じる。
……よくある映画ならこうだろう。でも、本作が面白いのはこれがオープニングでしかなく、本編はその先を描いているところだ。

 二人の愛は認められても、生活も認められるわけではない。ジョージは同性婚を理由に職を失い、保険、年金、不動産といった現実問題が次々と押し寄せる。幸せの絶頂も束の間、別居を余儀なくされる“ハッピーエンドの後”を容赦なく描いている。

 ベンは居候先の親戚宅で邪魔者扱いされ、そこの子どものジョーイにも蔑まされる。白髪が混じる二人の人生はそう長くない。まして、ファンタジー要素の欠片もない。極めて現実的だ。
ただ、不幸な境遇を並べるだけの作品ではない。愛は揃っているし、ここにある。だが、そこからどう生きていけばいいのか。
年輩の二人が試行錯誤する姿は、小説より奇妙な“愛の教科書”として描かれている。