「あんな顔になりたい」「一度生まれ変わりたい」「こんな自分はもう嫌だ」
誰しも変身願望は少なからずある。それでも、生まれて死ぬまでこの顔と付き合っていく。残念ながら鏡を見ると毎日同じ顔が映る。
ウジンはその全く逆だ。
変身願望なんてない。生まれて死ぬまでずっと同じ顔でいたい。でも、鏡を見ると毎日全然別の顔が映っている。
残念ながら、それは仕方のないこと。この“病気”は抗えない運命なんだから…。
そう諦めていたウジンが、ある日突然変わった。
「この顔でいたい」「変わりたくない」「ずっとこのままでいてほしい」。
彼が運命に逆らおうと思い始めたのは、心から愛する人に出会ってしまったからだ。
映画史はじまって以来の123人1役が実現
総勢123人が1役を演じる荒唐無稽な設定なんて、企画書が通るはずがない。
それなのに韓国映画界の一流の脚本家、撮影監督、美術スタッフが集結し、広告界の著名ビジュアル・アーティストであるペク監督の初監督作品を全力で彩っている。
毎日姿の変わる男を愛する女・イスをドラマ『華麗なる遺産』のハン・ヒョジュが演じ、その男・ウジンをキム・デミョン、ト・ジハン、パク・ソジュン、イ・ジェジュン、イ・ジヌク、ユ・ヨンソク、日本からは上野樹里が演じ、気の遠くなるくらい多い123人のキャストが名を連ねる。
性別・年齢・国籍を超えて1役を演じると一体どうなる?映画史始まって以来の初の試みがここにあります。
姿が変わる病気ではない“恋煩い”の物語
一つ間違えたらコントになりかねない。
朝起きたらハゲ散らかしたオッサンに? 少年に? よぼよぼバアさんに?
俳優が1人2役を演じることなんてよく聞くけど、総勢123人の俳優が1役を演じるなんて聞いたことがない。 前代未聞のブッ飛んだ設定なのに、どうしてここまで心に入り込んでくるのか。共感が何一つできない。
というのも、恋人の顔が毎日変わる人なんてこの世にいないからだ。それでも、共感の裏側にあるものに気づかせてくれる。
本作が描く“病気”とは、姿が変わることではなく、恋煩いのことだ。
食べ物が上手く喉を通らなかったり、よく眠れなくなったりするアレだ。
誰しも恋をすると日常に変化を求めてしまう。
ウジンの場合は否でも応でも毎日姿が変化するが、それを止めたいという心の変化が起きる。
イスにアタックするのをなるべくイケメン顔の日に選ぶのが面白い。
誰だってコンディションの良い日にコクりたい。
「眠らなければ姿が変わらない」と不眠に努める姿は愛らしい。
誰だってその一日の最高の記憶を眠ることで薄めたくない。
「姿が変わる」というブッ飛んだ設定ながらも、恋愛あるあるネタは満載だ。
あるときは「少年」なのにクレジットカードを店員に差し出したり、またあるときは「女の子」がイスに愛の言葉を囁いたりと、シュールな場面が笑いを誘う。
が、根本にあるのはシリアスな恋煩いで、その“病気”が次第に2人を苦しめていく。
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