嫌なことを忘れる時ってだいたい酒に走るか、友達と遊ぶか、旅に出るか。
それでもふとした瞬間に記憶が蘇り、「あーーーっ!」ってなることがある。誰かがたまたま放った言葉や、誰かの顔が忘れたいあの人の顔に見えたり。トラウマ再生装置が街の至る場所にあり、現実逃避ってなかなか難しい。
今作の主人公、シェリルなんて1600キロの自然道を歩いているのに、そう簡単に現実から抜け出せない。結局、どこに抜け道があるのか。これは無謀な旅に出る突飛な女性の話ではなく、誰もが抱える《人生の迷路》のお話です。
オスカー女優にして『ゴーン・ガール』などを世に送り出した名プロデューサーでもある、リース・ウィザースプーンが1600キロの距離を3ヶ月かけて歩き通した女性を演じます。原作はシェリル・ストレイドのベストセラーの自伝で、現在までに30カ国以上に翻訳されているんです。
監督は『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャン=マルク・ヴァレ、脚本は『17歳の肖像』『アバウト・ア・ボーイ』のニック・ホーンヴィが担当。苦しい現実から逃れるため旅に出る女性の道程に、過去の経緯をフラッシュバックさせ、一人の女性の人生そのものを炙り出す。とはいえあまり重々しくならないテンポの良い編集のおかげで、絶妙なバランス感覚の作品仕に上がっています。
【簡単なあらすじ】
1600キロのパシフィック・クレスト・トレイルの旅に出る前、シェリル(リース・ウィザースプーン)は最低な日々を送っていた。母・ボビー(ローラ・ダーン)をガンで亡くし、その孤独感から自暴自棄になって優しい夫・ポール(トーマス・サドスキー)を不倫やクスリで裏切るような行為を続けていた。
ついに結婚生活が破綻し、シェリルは人生の再出発のために旅を決意。しかし、スタート間もなく「行くんじゃなかった」と後悔する。極寒の雪山、酷暑の砂漠、尽きる食料に、明日への不安。過酷な状況の中でも過去の記憶が蘇り、母との思い出、夫への反省の念がシェリルに歩み寄る。果たして、彼女はこの旅に出口を見つけることができるのかーー。