愛する人を失ったら、その感情はどこに向かうのか?
日々繰り返すように舞い込んでくる悲しい事件とそのニュースの中では、その感情の行方なんて知らされない。
死体には墓場があるが、愛する気持ちの墓場はない。
主人公・トムもそれにもがき、苦しんでいる。愛する人を失った悲しみの果てに、彼が恐怖におののき、恋い焦がれるものとは一体?
そこで、本当の意味の“サスペンス・スリラー”を知ってしまうかもしれない。
『胸騒ぎの恋人』、『わたしはロランス』など全く新しいスタイルで映画の切り口を増やしていく、新鋭監督グザヴィエ・ドラン。世界中の映画ファンが注目する最新作の舞台は、なんと片田舎。音楽に溢れた今までの作品と違い、極力音楽を抑えて心理描写に徹する新しい試みに挑戦しています。
本作ではグザヴィエ・ドラン自身が主演をこなし、その映画監督らしかぬ(?)イケメンフェイス+金髪で魅了される人は続出でしょう。
ピエール=イヴ・カルディナル、リズ・ロワ、エヴリーヌ・ブロシュとともに、他では見られないドラン・ワールドを形成しています。
愛の喪失感があぶり出す感情
【簡単なあらすじ】
トム(グザヴィエ・ドラン)は恋人・ギョームを亡くし、途方に暮れていた。彼の葬儀のためにケベック州の片田舎にやって来たトムは、そこで実家の母親とギョームの兄・フランシスに出会う。母親はギョームには女性の恋人がいると思い込んでおり、フランシスはトムに嘘をつくように強要する。
無理矢理暴力で言い聞かそうとするフランシスに抵抗するトムだったが、喪失感で落ち込む母親を思いやり、ギョームの友人として振舞う。
やがてトムは嘘の恋人役として同僚のサラ(エヴリーヌ・ブロシュ)を呼び、フランシスに言われるがまま身分を偽り続ける。
しかし、いつしかフランシスにギョームの姿を重ねていくようになり、彼の知られざる過去にたどり着いてしまう――。