幸せのために、そこまでする?
これはもう、男にとって天敵以外の何者でもない。
自分の幸せのために「奇跡」「運命」「愛」という言葉を並べてジャンを誘惑し、“離婚相手”として標準を定めるイザベル。出会った時は「この男ウザい」って態度を見せていたのが、いざバツイチ相手に選ぶと色っぽい目つきで誘い、ソフトにボディタッチをして、セクシーな服に身を包む。全く、恐ろしい子です。
とはいえ、これもすべて本命の彼氏との生活のため。ジャンの聞きたくもない自己紹介に長時間付き合わせるイザベルの強引さも、微妙にかわされてしまう姿も憎めない。小悪魔になりきれない演技が愛らしいのです。
偽りの婚活旅行がコンゴまで到達し、マサイ族が出てくる下りは笑いが止まりません。
バツイチになるために部族と関わり、一度目の結婚を取り付けるその行動力がなんとも滑稽で、幸せのためなら手段を選ばない女の狂気すら感じます。
安定した生活を望むか、冒険するか
この映画が単なるロマンチック・ラブコメディに落ち着かないのは、人生の選択の岐路で迷う女性をきちんと描いているからです。
イケメン歯科医の彼氏と結婚すれば、安定した人生が約束されるでしょう。でも、ジャンと結婚すれば毎日アドベンチャーに似た刺激的な人生が待っている。イザベルの旅はただのバツイチ相手を探すものではなく、本当の意味で旅になったのです。
毎日代わり映えのしない職場と家の往復。毎日同じように愛してくる彼氏。決められたレストランで食事を取り、決められた曜日にセックスする。それが幸せと言えるのか?
イザベルの心は呪いのジンクスを破るための一度目の結婚相手と、本命である二度目の結婚相手の狭間で揺れ動く。
ジャンと結婚し、すぐさま離婚しようと奮闘するイザベル。いきなりビンタしたり、大事にしている棚を倒したり、パーティーで失礼な発言をしてみたり。それでも笑って許してくれるジャンの寛大さと、彼と一緒にいることで得られる刺激。まるで冒険のような彼との日々に、イザベルは離れることできなくなる。
ウソがホントになっていく。演技が本心になった時、それは「一度目の結婚は失敗する」というジンクスだって軽く超えてしまうのかも知れません。