愛っていつかは冷めてしまうのでしょうか。
両親を見るたびに永遠なんて存在しないと思う。この二人がかつて愛し合っていたなんて信じられない。
この映画のイラとその夫も同じ。夫婦仲は完全に冷め切っている。仲が悪いわけじゃない。ただ、緩やかに死んでいく愛でしかない。
その行く末を食い止めるために気合いを入れて作った弁当が、イラと、孤独な男・サージャンの人生を大きく変えることになる。
愛する気持ちが本人ではなく、見知らぬ誰かに届くことだってある。
人生酸いも甘いも噛み分けた男女にだけ許される、ささやかな希望がそこにあります。
カンヌ国際映画祭で絶賛され、インド国内のみならずドイツ、スイス、イタリア、オランダで異例の大ヒットを記録。世界中で成功を収めた『きっと、うまくいく』に負けず劣らずの人気で、世界の映画関係者を騒がしたのはムンバイ出身のリテーシュ・バトラ監督。丁寧で繊細な語り口が、男女の心の交流を静かに彩ります。
夫との夫婦仲に悩むヒロインには、4ヶ月にも及ぶオーディションの末に選ばれた舞台出身のニムラト・カウル。その相手のサージャン役は、監督が兼ねてからイメージをしていたというイルファン・カーン。渋く味わい深い演技が見逃せません。
愛妻弁当の誤送が導いた男と女のふれあい
【簡単なあらすじ】
大都市ムンバイのオフィス街、昼時に弁当配達人(ダッパーワーラー)が4段重ねの手作り弁当をサージャン(イルファン・カーン)の元に届ける。しかし、彼には身に覚えのない届け物。なぜなら彼の妻は何年も前に他界し、独り身。実はこの弁当、主婦のイラ(ニムラト・カウル)が冷えきった夫婦仲を取り戻すべく夫のために腕をふるった弁当で、誤って配達されてしまった。
イラはそれを知らず、空っぽになって戻ってきた弁当箱に喜ぶが、その弁当を食べた夫から「カリフラワー」の名が。そんなものは入れていないのに、と不審に思ったイラは弁当に手紙を忍ばせる。すると、弁当を受けとっていた見知らぬサージャンから返事が来る。
思わぬ偶然から手紙のやり取りが始まり、文通からイラとサージャンは互いの孤独を埋め合っていく——。