憧れの美容師と夢のような一日

そんなふうに思いながら、実はこの頃にちょうどTinderを始めたのだ。
位置設定を渋谷、10km圏内に設定してTin活を始めるとスーパーライクの通知が来た。スワイプをしてみるとそこにはどっかで見覚えのある男がいた。

名前が同じ。職業も美容師。ただ一つ情報が古いのは勤務先の場所だったが、もちろんこんなことは調査済み、以前勤めていた美容院の場所のことだ。
すぐさまライクをしてメッセージを送った。

私「あのー、知ってる人な気がするんですけど気のせいですかね…?」
美容師「わからないです。笑 会ったことありましたっけ?」
私「知ってる美容師に似てて…違ったらすいません」
美容師「もしかして、おゆみさん!?」

神はいた。
とても自然な流れで私たちは池尻大橋で一緒に夜ご飯を食べることになった。
「彼氏はいるんですか?」「どれくらいいないんですか?」「どういう人が好きなんですか?」
こんなにストレートに面接みたいな勢いで聞くことってありますかね?

私も聞いたほうがいいのかなと思って聞いてみると、どうやら彼は半年前に2年近く付き合った彼女と別れたらしく、その理由は遠距離になったからとのことだった。本人曰く「僕は遠距離でも平気だったけど向こうがダメだった」が別れの理由だそう。
ちなみに、好きなタイプはショートが似合う人。好きな芸能人は満島ひかり。正直、そんな軽々しく満島ひかりの名前を出さないでほしい。

oyumiの漫画みたいな恋の画像

1時間以上にわたる「この後どうする?」を続けたのち、私が滞在している渋谷のビジネスホテルで一緒に飲むことになった。
まさに夢のような一日。こんなことが自分の人生にあっていいのか! こんなことが!
完全に脳内お花畑状態で、再びお店に訪れて、もっと一緒にいたいのでついついカラーも頼んじゃったりして……。

そしてまた後日に外で会うのだけど、この日は忘年会シーズンで遅くまで飲んでいたのもあって待ち合わせ時間が0時過ぎ。とはいえ私も渋谷にホテルを取ってるし向こうもタクシーで帰れるので終電なんてものは気にしなくてよい。
そういうノリで会ったのだが、向こうのノリはそうではなかった。

待ち合ってすぐにスーパーに入って酒とつまみを買って、そのまま当然のように私の泊まってるホテルへ入る。私ここ金払って泊まってるんですけど……怒られるのは私なんですけど……と若干の不信感を抱きながらも部屋に入れた。 この段階で冷めきってしまって、同じベッドにいるだけでも不安と苛立ちで具合が悪くなって眠れなかった覚えがある。

顔はいい、背も高い、そしておしゃれ。
こんなに完璧なのにこんなに生理的に無理になることってあるのか……と思いながら朝を迎え、顔も見ずにベッドの外に手だけ出して見送った。