「えっ?!知らないの?!」理解を断絶するリアクションもうやめない?

長井短さんの画像

家でぼーっとテレビを見ていた時のことだった。画面には日に焼けた肌の中年男性と、若い男の子2人が映っていて、どうやらこれから中年男性が男の子2人に何かを教えてあげるようだった。見るでもなく見ないでもなく机の上をなんとなく片付けようとすると、テレビから聞こえてきた。

「かわいそうな世代だねぇ」

流れはこうだ。中年男性が、若い2人に昭和の頃に流行っていたものを教えようとした。すると若い子の1人が「僕たちは平成生まれなのでよく知らないですね」と合いの手を入れたのだ。するとさっきの言葉だ。「かわいそうな世代だねぇ」中年男性は機嫌が悪そうだった。

見る気も見ない気もなかったはずのテレビだったけど、途端に見る気をなくしてしまい、消した。今思うとその後も見ておけばよかったなと思うけど、とにかく、見る気がなくなってしまったのだ。

「かわいそうな世代」いやいや、誰だか知らないけど笑わせんなよおじさん。かわいそうってなんだよおじさんどういうつもり?自分でも気づいてなかったけど、どうやらこの時私も機嫌が悪かったっぽい。

生まれてないから知らないだけなの

こういうことって、そこら中にある。誰だって、自分の時代が最高だと思いたい気持ちが少しはあるだろうし、何より私たちは過去のことばかりを愛しがちだ。もちろん私も、自分が生まれた1993年からの25年間のことを特別な25年間だと思ってしまうことがあるし、その中でも98年から12年あたり(欲張りすぎ!)までは最高の思い出だと思う。

でもそのことで、自分以外の世代を「かわいそうな世代」なんて思わない。

思いも考えもしなかった暴力的な言葉が突然テレビから流れてきて、多分私はびっくりしてしまったのだ。そんなこと、人に言う?ヤバくない?いっつもそうなの?それともテレビだから?誰だかもわからないんだから聞きようもないし、でもモヤモヤするから、あの日に焼けたおじさんのことを想像するしかない。

「かわいそうな世代」なんていきすぎたフレーズは聞いたことなかったけど、同じような趣旨というか、この言葉が出てくるきっかけの感情は同じなんじゃないかな?と思うフレーズはよく聞く。

「良い時代だったんだよ」だ。

これは聞く。めっちゃ聞く。なんなら幼稚園時代の友達と集まってみんなでふざけて言ったこともある。「良い時代だったんだよ」は、聞いても嫌な気持ちにならないのだ。 私が生まれる前の世界のこと、もちろん超興味あるし、きっと素晴らしいことが沢山あったんだろうし、教えて欲しいなと思う。

でも、だ。ここからが問題だ。この後、おじさんが話してくれる昭和の思い出を、もちろん私は知らない。そのことを勉強不足だとかって理由で、叱りつけたり馬鹿にしたりしないで欲しいのだ。

ほとんどの場合、それは勉強不足とかの問題ではない。普通に、生まれてなかったんです!生まれてないの!生まれたら生まれたで、勉強しなくちゃいけないことは山ほどある。知りたいことだらけの人生の中で、自分が生まれる前の話に手をつけるのがちょっぴり遅くなっちゃうことって、仕方なくない?ってか、今に追いつくのも精一杯じゃない?

逆に、もしおじさんが私に「インスタグラムって何?」と聞いてきたとしたら、全然普通に教えるだろう。「っっ?!?!インスタグラムを!!知らないんですか?!?!」なんてマウントは取らない。知らないことは普通のことだ。だから私が「ポケベルってどうやって使うの?」って聞いた時、「っっ?!?!ポケベルの使い方を!!知らないの?!?!」なんて過剰なリアクションはどうか取らないで欲しい。コメディじゃないんだから普通でいい。

生活の中でスーパーコメディみたいなリアクションばかりとっていると、気づかないうちに私たちの間に断絶が生まれる。あ〜また馬鹿にされるのかと思うと、理解したい仲良くなりたいってエネルギーがすり減ってしまうのだ。