深いところまであなたと一緒に降りていく。無意識の繋がり方を学んで

 自分を好きになってくれない人や身勝手な人ばかり好きになり、不安定な恋愛関係に陥ってしまう女性たちへ。
「私は最初から私を好きじゃなかった」――自己肯定感の低い著者が、永遠なるもの(なくしてしまったもの、なくなってしまったもの、はなから自分が持っていなかったもの)に思いを馳せることで、自分を好きになれない理由を探っていくエッセイ。

永遠なるものたち014
「コーマワーク」

薄暗い闇の中にいる女性の画像 Pixabay

 いろんな偶然が重なって、昏睡状態の人とコミュニケーションをとるためのメソッド(コーマワーク)を学ぶ講座に参加しました。
頭の中でぼんやり、昏睡状態の人ともコミュニケーションってとれるんだ、と思った気がしますが、いや、それすら思わなかった気もします。それくらい、何もない心持ちでした。
でも、予想外の出来事はいつでも、期待していない時にふらりとやって来ます。ずっと夢中だった人とのデートでは緊張してしまって、あまりよく知らない人とのデートがかえって冒険的なものになるように。

 会場に向かう途中で、講座に参加する目的を後づけで考えてみましたが、気恥ずかしくて相手の目を見られない普段のコミュニケーションが、もっと丁寧で能動的になったらいいな、ということくらいしか思い浮かびませんでした。
しかし、初めてあう人たちがぱらぱらと座っている部屋に着いた途端、それすら忘れて、誰にも気にかけられないようにこそこそと空いている席を目指してしまいました。

 講座は昏睡状態を疑似体験するところから始まります。
暗くした部屋で、椅子に座って、目を閉じて、もちろん声も出さないように、ひたすらじっとするのです。
なるべくリラックスする体勢のほうがいいんだろうかとか、椅子の上でもぞもぞしてから、目を閉じて電気が消えた瞬間、すぐに「あ、これは結構きついな」と思いました。
誰からも話しかけられないのもつらいけど、好きな人から話しかけられた時に応えられないと思うと、なお、つらいのです。たったの数分だったはずですが、いつ終わるのか知らされないままじっと目を閉じているのは心細く、目を開けると何人かの女性が泣いていました。泣いている彼女たちを見ると、私と同じ気持ちであることがわかって安堵します。

 講師の女性が、「つらかった方」と手を挙げるように促したので、さっと手を挙げると、何人かの人が同じように手を挙げ、しかし、よく見ると泣いていた女性たちは誰も手を挙げていませんでした。それもそのはず、彼女たちは口々に、「昏睡状態になってみて癒された」「現実に戻りたくない」と言ったのです。
とてもびっくりしました。だって、彼女たちは実は、私とまったく違う気持ちでいたのです。

 目が覚めている人にもいろんな感覚の人がいるように、昏睡状態の人にもそれぞれの感覚があるといいます。昏睡状態から覚めた人の中には、一瞬で何年も経っていたと感じる人もいれば、ずっと周囲の声は聞こえていて、記憶のあるところとないところがまばらな人もいるそうです。
ですから、実際のワークではやたらに声をかけたり、規則的に手足を動かしたりするより、眠っている人に対して呼吸を合わせるような感じで、意識の深度を読み取りながら、その人に合ったアプローチをしていきます。