SWIMMERで幸せな未来を馳せていた

いつの間にか「SWIMMER」での買い物は、好きな人と好きなものと一緒に暮らす未来に思いを馳せる時間になっていました。しかし、あれからショーウィンドウのウェディングドレスが何回、何十回入れ替わっても、私はそのどれにも袖を通すことがないまま、「SWIMMER」はもうすぐ閉店していきます。

悲しくなるのは嫌ですが、わざわざ悲しい気持ちになりたい日があったので、「SWIMMER」に行ってきました。

いま、あの頃思い描いていた将来にいるのに、結婚もひとり暮らしもしてないね。気恥ずかしいようなバツの悪い気持ちは、パステルカラーの食器たちに気づかれてしまいそうでした。

家にもある食器や掃除用具を両手一杯の買い物袋に詰め込んだ帰り道。猫のせっけんボトルや、うさぎのケースに入ったカーペットローラーを待って帰る代わりに、いくつものときめいた時間たちが、なくなっていくお店に閉じ込められるような感覚がしました。それは悲しくて、いい気持ちでもありました。

Text/姫乃たま

次回は<いつかの「私」が願っていた夢を、叶えた「私」は願ったことすら忘れている>です。
貴方は、以前自分が「夢見ていたこと」「欲していたこと」を覚えていますか?何故私たちは、夢が叶うと、叶うことを切に願っていたあの頃の気持ちを忘れてしまうのでしょうか。もしかしたら、私たちの気づかぬうちに叶っている夢もあったのかもしれません。今回は姫乃さんが「夢と欲望」について綴ります。