彼女が強い女になったワケ
16歳でtwitterを始め、いつの間にか何万人に支持され、発言する度にSNSの中で騒がれた。今も20歳でありながら、名指しの仕事が後を絶たない。
若い彼女にとって、世の中はあまりにもちょろく、あっけなく見えただろう。
本来なら16歳の子が発信するディスりなんて、たしなめられることがあったとしてもチヤホヤされることではない。
「世の中くだらねーな」の一時期の思いは自然に消えていくはずなのに、あまりにも能力の高い彼女はあまりにもそれをうまく行い、大人から求められるほどになってしまった。
彼女は、それにしっかり答えたのだろう。答えてきたからこそ、今の彼女になったのだろう。
ハシャイでる人間を斬ることが評価されるのだから、その刀をいつでも華麗に振り下ろせるように、日頃から刀を研ぎまくっているのではないだろうか。発言が評価され、もっと毒を磨き、発言を繰り広げる。
「元々私は人をバカにするのが得意ですから」と彼女は言うけれど、何を口に出すかで考え方や性格なんていくらでも変わる。その結果が、今の彼女じゃないだろうか。
元々そうだったとしても、さらに毒を吐きまくることで、自然に毒が出てくるような考え方や生き方を彼女は自然に選び抜いている気がする。
そうしてどんどん発言は研ぎ澄まされ、より「求められる」人間像が確立されていく。「私は媚びない」と連発するが、「媚びない女ブランド」が求められていることを心底わかっている。
セルフプロデュースが見事か。SNS時代の申し子か。
強い言葉や思い切った行動が持てはやされる時代。
尖る彼女を求める声は、後を絶たない。事実今、書籍販売の動きもあるし、来年には下着ブランドを立ち上げるという。彼女のファンは増えるばかりだ。
だから‥もう老婆心ながら‥言いたいことがある‥どうか、もっと広い世界を見て欲しい。媚びない、毒の強いあなたを演じること以上のことを‥。それは1日共に過ごし、「この人はズルイなー」と感じてしまった私だから言いたい。
「別に、人に好かれようとか思わないんで」
と、ユウカちゃんは何度も繰り返した。
すごい強さだと思うんだ、でも、あなたが人に好かれようとしないことで周りはかなり気を使ってるぜ?と私は思う。あんなにもひどい態度を取られ、あんなにも非社交的な態度を取られたら、相手は頑張る。
「目の前の人との時間をいいものにしたい」っていう社交性を発揮する。いつ・何によって機嫌を損ねるかわからないあなたのことを、見下されながらも気遣ってるぜ?
「そうしたいからそうしてるんでしょ」と言われればそれまでだけれど、ユウカちゃんの「媚びない」は相手の優しさの上に立脚しているように見えた。
「私、結局興味持たれるし認められるんですよね。私みたいな人間気持ち良いからじゃないですか」
色んな人の気遣いで成り立ってるのに、見下した笑いを繰り出すのは、ズルイと思った。媚びないことと、「ありのままの自分を押し付ける」ことはきっと違う。人に気遣いながらも媚びずに生きる方法を、彼女なら見つけられる気がした。
どうか、「もっと毒を!」と求められることに答える人生で、終わってほしくないと思った。
この願いは、彼女の生き方への嫉妬も混じっているのだろうか。だからこんなにも違和感を感じてしまうのだろうか。100%否定もできない私も、彼女の強い言葉に踊らされているのかもしれない。
冬の東京。笑ってしまうほどの自信に溢れ、人をけなしまくる少女がいた。
強い言葉を放ったもん勝ち、思い切った行動をしたもん勝ちのこの世の中で、強い強い言葉を放つ20歳の少女は、これからも成功していく気しかしなかった。
そしてこれからも強い言葉を放つほどに、彼女の考えは尖っていくだろう。
彼女の強さは眩しく、同時にとても傷ついた。
ねえ世の中よ、この子を産みだしたことを、どう思いますか。この子に踊らされていることを、どう思いますか。
我々は、どんな世界に生きているのだろう。なんてな。
自分の意にそぐわない人間をディスることが強さと言われる時代に、人間的なヤワさはどこに行くんだろう。なんてな。
あなたは、強さと優しさ、どんなバランスで生きていますか。一体何が、正解なのでしょうか。
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Text/舘そらみ