北へ向かうなら季節の変わり目がおすすめ

雪が積もり始めた11月の札幌 盛り上がった雪の上を歩くか、へこんだ氷の上を歩くか……

和久井なんぞスパイクを着けてても、たまにズルッと滑るので、トボトボ足元を確認しながらじゃないと歩けません。あそこに路面が見えてるところがあるから、次はこっちに足を出して……あそこは凍ってそうだからこっち……と、もう考えることがいっぱいです。

砂利が撒かれてドラゴンフルーツの果肉みたいになってる雪の積もった路面を、前よーし、横よーし、みたいに確認しつつ歩くんです。Googleマップの指示通りの時間にはとうてい目的地にたどり着けません。なのにみんな、颯爽と上を向いて和久井の3倍の速さで駆け抜けていくんですよ。

よく「関東(とかの雪の少ない地域)の人は、雪上の歩き方がへたくそだ」なんて聞きます。雪国の人たちは、足を滑らせずに、真上からそっと置くようにして歩くとかいいますけど、そんなこたあもうすでにやってますよ!それでも足がズルッといくんです。 こうなると雪国の人たちは、足の裏に何か仕掛けがあるとしか思えません。

もう、外を歩く緊張感たるや天皇陛下へ拝謁するかのごとくですよ。目的地にたどり着いたときの達成感は、チョモランマ登頂って感じです。

ご飯を食べに行ったレストランのスタッフに「みんな歩き方が上手いですね」と言ったら「私は6年こちらに住んでますが、育ちが関東なので上手くないですよ」と言ってました。雪の上にも3年どころじゃないんですね。

札幌市民の方に「このあたりは雪が降っても除雪しないんですか?」と聞いたら、「今はまだ雪の量が大したことないんで、やるのは12月以降です」と言われました。
見渡す限り車道も歩道も雪まみれ、踏みしめられた雪でゴボゴボツルツルになってるというのに「大したことない」ですと?

年に数回、積もるか積もらないかの雪しか降らない関東平野で生まれ育った和久井には、驚愕の常識違いです。

北へ向かうなら、季節の変わり目がオススメです。異世界で冬のひまわり体験ができますよ。

Text/和久井香菜子

※2017年11月29日に「SOLO」で掲載しました