ほろ苦い恋の終わり
余談になるけれど、彼とは大学入学前の春休みに別れた。
彼の最後の言葉はこうだ。
「(眞駒の)性格が、悪すぎる……」
先入観を持たず私のことを深く知ろうとしてくれた彼の愛も、結局はみんながウワサしていた通り、私の性格の悪さゆえに滅んでしまったのだなあと、この失恋を思い出すたびに笑っちゃうような惨めなような気持ちになる。
もしかしたら彼は嫌われ者の私のなかに自分に似たものを感じていたのかもしれない。お互いに一番の理解者になりえるという期待をもって私を好いてくれたのかもしれない。
けれど、彼にとってどうしても受け入れられない部分が私の中にあったとして、それが私の性格の悪さだったのなら、本当に悲しい話だ。
青春時代のこの恋は、端から見れば善良な人気者と性悪な嫌われ者という異生物同士が、何かの間違いで付き合ったという滑稽なお笑いぐさに過ぎないかもしれない。
けれど私にとっては、そしてあるいは彼にとっても、違和感を抱きながら生きてきた二人が人生のなかで初めて分かり合える相手を見つけられた幸福な体験だった。それは、ずっとひとり彷徨っていた異国の地で、同郷の人と出会ったような、安心感に満ちていた。
“忘恋会”であらわになった痛み
「女の恋愛は上書き保存」なんていう太古から伝わる至言の例に漏れず、私は恋愛の一部分だけを切り取って、あとは月日と一緒にエイヤと流し去ってしまう。
だから、所謂“忘れられない恋”みたいなものは正直あまりない。この原稿の話をいただいて考えあぐね、記憶の片隅に追いやっていたような恋愛のできごとを箇条書きにしてみたが、それはそれは地獄のような作業だった。
今回は、そんな中でも特に印象深い“恋愛のはじまりと終わり”について、飲み過ぎた酒もろとも吐き出す代わりにこうして書かせてもらった。
私が恋愛を上書き保存してしまうのは、恋愛の思い出を丁寧に保存し、自分の記憶にとどめておく強さがないからなのかもしれない。そんなことにまで気付かされた。
Text/眞駒
眞駒
平成生まれの独身アラサー。都内IT企業を退職し、日々ボンヤリしている。
ツイッターにはじまり対談やコラム執筆など、身を削って出たカスで文字を書いています。
ブログ『おんなが泣くとき』
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