知らない体験や感情に腹立たしくなる

――そういった「恋バナ」を友人とする機会はあるんですか?

米代:昔からの友人はみんなオタクなので、二次元の恋愛の話しかしませんね。マンガを描きはじめてからは、恋愛経験が豊富な人に相談することも出てきましたが。ものすごいサイクルで恋愛をしている人もいてびっくりすることもあります。

――それはわかります。私、自分に一切なにもない2年くらいの間に、結婚、離婚、再婚、出産までこなしていた人がいて、茫然としました(笑)。「みんな恋愛のことばかり考えていてバカらしい」というふうには思いはしませんか?

米代:まったく思いません! むしろ尊敬しています。恋愛って、人と人が距離を詰めて関係を構築していくことじゃないですか。それができる人は本当にすごいと思っています。

――2巻のかのんのセリフにもありましたね。恋愛を10代のころにしておかないとすべての「距離感」が狂うという……。まわりの人を見ていてもそう感じるんでしょうか?

米代:いえ、そういうことはないです。恋愛経験のある/なしによって人にレッテルを貼るようなことは、私はむしろ許せないんです。ただ、自分のことになると別で、卑屈になるきらいはありますね。たとえば、担当さんや他人の恋愛話を聞いたりしているときに、自分が知らない体験や感情があることについて腹立たしくなるときがあるんです。

――創作をされている人ならではの葛藤だなと感じます。

米代:だから、その腹立たしさを解消するためにもっと経験を積みたい、というのはありますね。それと、経験することで何かが変わることはないのかもしれないけれど、経験しない限りは「変わらない」ということを確信できなくて思考だけが空回りしてしまう。だから、それについて考えちゃって袋小路になっている状況を突破した上で、もっと別のことに思考のリソースをさいて、マンガを描いていきたいです。