英語を学びに1年間留学に行く

 彼女は数週間後に1年間フィリピンに留学する。目的は、語学留学。
目の前にいるセクシー姉さんと留学があまりに結びつかなくて、また何より、26歳になって“語学留学”で“フィリピン”というのがちょっとひっかかり、たくさん質問をしてみた。

「もっと若い時に行きたかったけど、結果今が一番行く時なのかなって思うよね。フィリピンなのは、一番安かったから。安くて語学が学べるんだから最高だよね」

 26歳を若いという人もいるだろう。でも、26歳の女にとって、3年同棲中の彼氏となんの約束もなく離れ、語学留学に1年間行くということは、かなりの決意ではないだろうか。

「現地に行かないとわからない言葉って絶対あると思うの。あんなに中学校とかで毎週何時間も英語を習ったハズなのに、タクシー呼んでとかドライヤー貸してとかも言えないのは悲しいじゃない」

 そんな状況の26歳が年単位の留学を決意する理由としては、なかなかにライトだな! という失礼なツッコミが入る。

「語学身に付けたあとにどうなるかとかわかんないけどさ、でも通訳とかなれたらいいし、カナダとかで店やったりするかもだし」

 結構な目標じゃないかい! 26で語学留学をはじめてそれ間に合うんかい! あまりにも風貌に似合わない発言に戸惑いが止まらない。戸惑いながら「そんなに好きな彼氏と離れることは、いいの…?」と聞いてみる。

「子どもなんてみんな結局産むんだよ。私だってそりゃ結婚したいとも思うし、今の彼氏だって好きだし、子どもだってかわいいと思うし。でもまだ自分が結婚して、子どもを産むのが想像つかないんだよね。だって、したいことしたいじゃない」

 あ、この人、感覚が若いんだ、と腑に落ちた。ものすごく含蓄のある言葉を放ちそうな外見なのに、実際に出てくる言葉は猛烈に若い。 そう思ったら色んなことがつながった。

外見が育った女の、ピュアな中身

 自分の話をはぐらかすのも、話すほどドラマチックなことがないからじゃないか。
発言がコロコロ変わるのも、実感を伴った“確信”が無いからじゃないか。
そうだ、一度セックスをしたら付き合えると思う無邪気な感覚が、ゆか姉さんそのものなんだ。何かと妖艶ボイスでささやくのも、若さゆえのつくろいとも言えるのかもしれない。
実際、お酒を飲むほどにその若さが漏れてきた。

「え、どういう意味? なんで? わかんなーい」

 こんな言葉が増えた。
それぞれが自分の経験に基づいて色々思いを語る中、ゆか姉さんは芸能人の話や、「テレビで言ってたけど」の話を語っていた。

 …若い。若いんだ。
「経験豊富そう」って思われちゃうから、それに見合う所作を身につけていった。そして、世の中の酸いも甘いも熟知しているかのようなオーラを身に付けた。
本当はそんなに恋愛もしてきてないのに。そんなに人生経験もしてきてないのに。

 その外見から、私も「すげー話聞けそう」って先入観を持ってごめんね、の思いになる。先入観がなくなった頃に現れたのは、ピュアなちょっと耳年増な女の子だった。

「何より金が一番大事でしょ。知ってる? メンズなんてバカなんだよ」

 と勢いよく放ちながらも、語学留学に行くし彼氏に尽くす、そのギャップにもっと早く気付けば良かった。

 26歳。十分一人前として扱われるような年齢になり、結婚の第一次ピークも終わった。責任ある仕事だってやってきて、部下もできた。でも、まだまだ心は青年だ! 全然違う世界へ飛び込んでみたくもなるさ!

 錦糸町、4番目の土地。外見とはウラハラに、驚くほど若い心を持ったゆかちゃんに出会った。実際、「姉さん姉さん」と最初はみな呼んでいたが、最後には「ゆかちゃん」と呼び、末っ子扱いになっていた。そんな若いゆかちゃんは、これから言葉も通じない未知の土地へ飛びこんで行く。1年後、また彼女に会いたい。

 そして次回、錦糸町で出会ったもう一人、あさこちゃん24歳。対照的にとんでもなく大人な彼女は、最愛の彼氏を病気で亡くしていた。

 街ゆく人のリアルな恋バナが、ここにある…。

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次回は<「既婚者に惹かれる」と言い切る、苦しくてまぶしい24歳女子の恋愛模様>です。
錦糸町の華金。なかなかナンパが成功せずぶるぶる震え出したところで出会ったのは、人生2社目の会社をまさに昨日退職したあさこちゃん。彼女の恋愛観は若くして経験したあることがキッカケで…