「クリエイティブな仕事がしたいんです!」「で?」

 その一方で「クリエイティブな仕事がしたい!」ではなく「クリエイティブだと褒められたい! ちやほやされたい!」と承認欲求を目標に動いてしまい、人生が空回りしている方もよく見かけます。

 手始めにTwitterで「かわいくなりたい」という単語で検索してみましょう。ズラリと並ぶ自撮りがご覧いただけます。

 胸が苦しくなってきたかな? でもまだまだ解説するね?

 次にTime Ticketというサービスを見てみましょう。これは様々なジャンルの方が「自分」を時間制で売り買いし、売上の一部をサービス管理会社が寄附する仕組みです。

 プログラミングや語学など専門知識を実際に教えてくださる有用なチケットがほとんどで、私も何度か利用させていただきました。
ですがチケットの中には「女子大生があなたの話し相手になります」「しゅごいしゅごいと褒めます」といったもはや専門知識じゃなくって、性を売りにすることで承認欲求満たすために参加しましたよね……それ? というアブナイ案件も。

 しかし、ここまでの人たちは軽傷の「承認欲求に喰われた人たち」です。何が重症かって?
承認欲求が重症になればなるほど「自己努力の比率が下がる」のです。

 最も重症なのは「私をスカウトしてください」と編集部やアーティストへ連絡してくる方です。
こういった方は、大きな芸能事務所へは連絡しません。大手芸能プロダクションは定期オーディションなどで所属芸能人を選考しており、自己PR文を送りつけても「○月○日に選考会へお越しくださいね」と門前払いされる可能性が高いからです。これでは「私は選ばれた特別な1人だ」と思えません。

 あえて踏み台にできそうな、小さな出版社やプロダクションを狙い、選ばれてスターダムにのし上がる自分を想像する……。
そんな恐ろしい「何者にもなれない私たち」の世界が、いま訪れているのです。

★次回は何者かになりたいという願いが今までどこで消化できていたのか、なぜそれが現代で可視化されたかをお伝えします。

Text/トイアンナ