男性の連絡先を消し続ける生活に別れを告げるために
漫画家・いくえみ綾さんが1991年に発表された『みつめていたい』という作品があります。
この漫画は広真千子という女子高生が主人公です。
男子から「好きだ」と言われることが嬉しくて、今まで次から次へと受け身で恋人をつくってきた彼女の前に、好きだと言ってくれる人が同時期にふたり現れ、彼女は自分の気持ちがわからなくなってしまいます。
全体を通して心理描写が多く、どっち付かずな気持ちや、このままではダメだという葛藤が細かく描かれています。
全二巻と決して長くはない漫画ですが、まさに「求められること自体の嬉しさ」や、周囲から見たら優柔不断で残酷なことでも、本人には事情や考えがその都度あるという「簡単に思えることの難しさ」が主題となっているので、ご自身の経験を思い返すことのできる場面が多々あるのではないかと思います。
恋愛は「ある日突然理想的な人が目の前に現れて無条件に私の生活を良くしてくれる」というものではありません。
たとえば相手ともっと時間をかけて話をするだとか、そういった億劫に感じられるごく普通のことをこなすことができれば、状況は改善されていくのではないでしょうか。
これは「付き合っている相手が自分の事を好きじゃないかもしれない」という悩みにも同じことが言えると思います。
ひとりの人間に根気よく、あきらめを前提に持たずに接することができれば、少なくとも「好き」とは一体何なのかを正しく模索する時間が得られると思います。
ニュートラルなコミュニケーションを心がけることで良好な人間関係を築き、そしてその人間関係の中で自信をつけていくことができれば、「好きでもない相手と関係を持っては後悔し連絡先を消す」という生活からは離れられるのではないでしょうか。
いつか心から安心して愛すること、そして愛されることができるよう願っています。
(つづく)
TEXT/はくる
初出:2016.04.20