夫が無職でもクールな女友達

さて、先日、複数人の女友達と飲んでいたところ、そのうちのひとりがこんなことを言い出しました。「実はうちの夫、もう一年くらい無職で……」。配偶者が転職のタイミングで束の間、無職であるという話は往々にして珍しくありませんが、一年もの間、無職だというのはなかなか。その場にいた皆も一気にざわめきたち、まずは口々に心配の言葉を彼女に投げかけました。そうして、一旦落ち着いたところで、勇気あるひとりが恐る恐る切り出しました。「家計とか、大丈夫なの?」

これまで二馬力だったところが一馬力になれば、家計にダイレクトに影響があるのは当然。しかも彼女にはまだ幼い子どもを抱える身、これからのことを考えると不安で仕方ないと思うのですが、彼女は他人事のように「うーん、わかんない」と言い放った。

なんでも彼女の家の家計は、それぞれ決まった割合を家計に入れる別財布方式のため、夫がこれまで通り、毎月決まった金額を入れつづける限りはそれでよしとしているというのです。「例え会計は別財布でも、結局は共有財産だから、そのお金が毎月目減りしていくのは、耐えられないわ……」と友人のひとりが漏らしたものの、あくまでもクールに微笑んでいる彼女を見て思いました。

そうだった。受難に見舞われた際、無駄に騒いだところで、なにか事態が変わるわけではない。むしろ騒げば騒ぐほど、頭の中でそのことが占めるスペースや時間を多くなり、余計に心配が募ってパニックになってしまう……。有事こそ、心を落ち着かせてマイペースに、粛々と日常を送る。とかく心を乱されがちな昨今ですが、クールな態度を倣いたいと思った次第です。

Text/大泉りか