不機嫌になって黙り込む…それ「パッシブアグレッシブ」かも?

不機嫌な男

今でもわたしを苦しめる、ふたつの悪夢

たまに見る悪夢がふたつあります。
そのひとつは煙草を吸う夢。かれこれ12年ほど前、フリーランスになったのを契機に禁煙を決意し、以来一度も吸っていないし、正直なところ、もう吸いたいとも思っていないのに、なぜかたまに夢に見るのです。

「わー! 吸っちゃった!!!」と後悔したところで目を覚まして「あっ……良かった。吸ってなかった」と胸を撫で下ろす。
煙草の中毒性がまだ完全に抜け切れていないのか、はたまた潜在意識に「二度と吸わぬ」という強迫観念を強く持ちすぎているせいかはわかりませんが、いまだにわたしが煙草に囚われていることを思い知って、背筋が寒くなります。

もうひとつの夢は、かつての恋人にモラハラを受けている夢です。
例えば先日見たのは、カメラからフィルムが抜き取られていることに気が付いた彼が、不機嫌になる夢でした。「なんでフィルムがないの?」と尋ねられて、「知らない」と答えるわたしを「なんで知らないの? 僕の家に最後までいたのは君でしょう?」と問い詰めてくる。
夢の中のわたしは「自分の持ち物くらい、自分で管理しろよ」と心の中で毒づきながらも、彼が不機嫌に黙り込むのが嫌で、必死にあたりを探したり、「きっと見つかるよ」などと、彼にフォローの言葉を投げかけている。

すると場面が代わり、現実には存在しない、わたしの“親しい女友達”という立場の女性が現れて、こう言います。「あなたが触ってなくて、彼自身にも心当たりがないというのならば、あなたと彼以外の誰かが、家にあがったってこと。彼の浮気を疑ったほうがいい」。ああ、なるほど。そういうことか! と、心得た瞬間に、目を覚ましました。最悪の目覚めです。

起きて夢だったことに気が付いた後、「あの彼は、これから先のわたしの人生には、もう登場することはない人だ」ということを思い出してほっとし、そして次に「ちくしょう、浮気のことを責め立ててから目覚めたかった」とやり場のない怒りに震え、そして最後には「ところで、カメラのフィルムっていつの時代の話よ」と夢の理不尽さに突っ込みを入れました。
もちろん現実には、カメラのフィルムがなくなったことはないし、彼が浮気をしていたとも思えません。あくまでも夢。けれどもわたしはいまだ、こういう夢を見る。

些細なことで不機嫌アピールをする恋人

彼と付き合っていた当時。カメラのフィルムがなくなったことはないけれど、その代わり、カレーのときに福神漬けがなかったり、マヨネーズが残りわずかだったり、中濃ソースがなかったりは度々ありました。

わたしはカレーに福神漬けがなくてもいいし、マヨネーズがないならドレッシング、中濃ソースの代わりにウスターソースをかければいいじゃない。なんなら醤油もポン酢もあるんだし、という考えの持ち主ですが、一方で彼は、不機嫌そうに「どうするの?」と尋ねてくるのが常でした。

どうするもなにも、ないものはない。今ならはっきりそう言う……いや、彼と付き合いたての頃もそう言ってました。「福神漬けくらいなくても、まぁいいじゃん」と。けれど、途端に彼は仏頂面になり、まったくしゃべらなくなってしまうのです。

「そういうふうに黙り込まれると、空気が悪くなるからやめてくれるかな」と提案をしたこともあったけれど「せっかく楽しみにしていたカレーなのに、福神漬けがなくて残念な気分なんだから、仕方ないだろ。悲しむくらい、いいじゃないか」という返事がかえってきた。
そんなことで悲しむなら、福神漬けくらい買ってきてやるわ、とスーパーに向かったのですが、たぶんその対応は完全に間違えていた。そんなものは本人に買いに行かせればよく、「面倒だから」と買いに行かないくせに不機嫌なアピールを続けるのならば、突き放せばよかったのです。

だから、突き放すことをせず、彼の顔色を読みすぎていたわたしが、どんどんと彼をモラハラ男へと育て上げたのかもしれないと、ずっと自分を責める気持ちがありました。けれど、最近ある言葉を知ったことで、それは大間違いであったと気が付いたのです。