Yさんはどこかで離婚したいと思っていたのかも?

しかし、今となると、こうも思うのです。妻子のいるYさんが、浮気をしまくっていたのは、どこかで現状を変えたい――本当は妻と別れて、別の女性と人生を歩みたい――と思っていたからではないかと。Yさんとセックスをした女性たちは、わたしも含めて皆、Yさんをヤリ捨てていた。それは、既婚者でありながらヤリチンのYさんが求めているのは当然、体だけの軽い関係だと思っていたからです。

でも実はYさんが求めていたのは、離婚を決意する原動力となるような“恋”だったのです。だから、結果として彼女は離れていってしまったけれども、ずっと願っていた離婚という目的は叶ったから万々歳なのではないでしょうか。

Yさんに対して、もうひとつ不思議に思っていたのは、わたしから見てもバレバレな彼女の気のなさを、なぜ見抜けなかったのかということです。けれどそれも「彼女は俺のことを好きになってくれた」と信じ込むことで、離婚へのパワーを得たとするならば、合点がいきます。

そうじゃないと、あんなあからさまに自分に気のない人を、既婚者の彼が「彼女」と思い込むなんていうバカなことがあるわけない。いや……でも、ただたんにバカなだけだったのかもしれない。だって幼い子どもを手放してまでも、恋を成就させたいと願った男ですからね。

Text/大泉りか