「夜遊びする妊婦」を心配しないスナックのママ。人に立ち入らないプロの姿勢

スナック

先日ツイッターを開いていたら、友人の漫画家、ドルショック竹下さんのツイートが目に入りました。


「ああ、あそこのスナックのママか……」とすぐに心得たのは、以前、ドルさんが、そのスナックを訪れた際に、わたしも一緒にいたからで、確かにママは「Gカップなのよ!」と接客中にポロリと乳を出していたし、お通しには、誰かからの差し入れの弁当を適当にバラした、紙のカップに入ったままの煮物と、ナンが出てきたことが、強烈に印象に残っています。おまけにナンには砂糖がたっぷり振りかかっていて甘かった。

あの店で、大変インパクトがあったのは、ママの存在だけではありませんでした。お店の従業員たちもなかなか。推定70代後半にみえるグレーヘアの女性もいらっしゃれば、イッセイミヤケ風のプリーツドレスに、片耳だけ揺れる大振りのピアスを付けた坊主頭の男性もいる。

スナックというよりは、近所のご隠居たちの寄り合い所のような雰囲気ですが、寄り合い所にしては、揃っている面々がファンキーすぎる。しかも、客席はポケットのたくさんついたベストや、ポロシャツの上にジャケットでキメたシニア男性客たちで、ぎっしり満席。すごい人気店です。

我々に向かい「娘たち、わたしのことは母さんって呼んでね。東京の母さんだと思ってくれていいから!」というママの過剰に熱烈な接客を受けつつ、甘いナンと煮ものをつまみに、店で煮出したお茶で作ったお茶ハイを飲んでカラオケを歌い、閉店時間まで楽しく過ごして、その夜はご機嫌で帰宅しました。

「大丈夫なの?」と言わないママに驚き

店を再訪したのは、それから数年後のことです。
“東京の母さん”は数年前に一度だけ訪れた一見客のことなど、当然覚えていませんでした。店舗自体も、以前の場所は地上げにあってしまい、数百メートル離れた場所に移転していた上に、女の子の数も随分減って、ママ以外にはふたりの従業員がいるだけ。客席もだいぶガランとしています。

以前の乱痴気とはまた違ったしっとりムードではあったものの、ママは相変わらず快く迎え入れてくれた上、「若い頃、付き合っていた男性に一億円を貢いだ話」などをして、わたしたちを楽しませてくれました。
一億円! 嘘か本当かはわかりませんが、嘘にしてもそのスケールのデカさに驚きました。

もうひとつ驚いたのは、ママがわたしに関して、一切なにも言わなかったことです。……というのも、実はその時、わたしは出産予定日を一週間後に控えた、ドでかいお腹の妊婦だったのです。

出産予定日が近づくと、多くの妊婦は行動を自重します。いつ陣痛が起こったり、破水したりするかわからないからです。
けれどもわたしは、出産までのカウントダウン時、昼夜構わずに外に出て、遊び倒していました。なぜなら、出産後はどう考えても、これまでのように身軽には外にも出られないであろう想像がついている。ならば、まだ子どもがお腹の中にいる今のうちに、会いたい人には会い、行きたい場所には訪れておきたい。

それに、どうせ破水したり、陣痛が起きたりしたところで、その場ですぐに生まれるわけではなく、半日やそこらはかかるのです。1時間以内にタクシーで病院に駆け付けられる距離ならば、さして問題はない。
そう考えて、出産予定日前はもちろん、過ぎてもなお、遊び歩いていたのですが、そうやって必ず行った先々では、必ず「大丈夫なの?」と心配の言葉も投げかけられるのです。