もっとも、これまで誰ともうまくいかなかったのは当然のことでもありました。恋人を選ぶ際に、わたしは何よりも恋愛感情を優先していたからです。どんなに価値観が違っていても、お互いに好きあっていれば、なんとかなると思っていた。けれど、それは甘い考えだったのです。「好き」という気持ちは次第に醒めていき、「合わない」という事実だけがどんどんと積み重なっていく。

結婚を前提とするのならば、恋愛感情よりも、一緒に生活するのに楽な人であることを優先すべきなのでしょうか。つまり言い換えれば、わたしにイニシアティブを任せてくれて、それに不満を持たない人です。

周囲を見ると、相手の職業だとか収入だとか実家の状況だとかの肩書きや属性に加えて、「絶対に浮気をしない」「とにかく優しくて、なんでも自分の言うことを聞いてくれる」「自分が立場を強くいられる」といったことを結婚相手に求めている女性がほとんどでした。わたしと同じく「好き」という感情だけで突っ走る女は、大概クズ男をひいています。

でも言い方は悪いけれど、そうした、自分が望む生活を送るために結婚相手を道具にするような“奴隷婚”には抵抗がありました。もっとも、結婚生活の支配権を握ろうとする前者からすると、感情に従うだけの後者はあまりに考えのない浅はかなバカに見えることもわかっています。しかし、「バカだと思われてもヘッチャラ！」とばかりにわたしは突き進んできたのでした。それでも、その時に弱気になったのは、前の恋人との生活で受けたダメージが強すぎたせいだと思います。