縁の切れ目の金の切れ目

友人いわく、結婚後、突然仕事を辞めてきた上に、いつまで経っても働き始めようとしない夫に愛想を尽かせて実家に戻ったところ、父親から「今すぐに家に戻って、パソコンと、持っているブランド物や金目のアクセサリーを、すべて引き上げてこい!」と言われたそうです。「何を大げさな」と苦笑しつつ、急かされるまま家に戻ったところ、パソコンは無事だったものの、ブランド類はすべて、すでに売っぱらわれていたというのです。

「うちのお父さん、見抜いていたの。凄かったわ」と感心したように話す彼女に、その時は「妻のものを勝手に売っぱらう人なんているの? うわー、信じられない」とのんきに話していたわたしですが、そのわずか数か月後にはこのザマです。

黙っているのも癪にさわるので「銀行のお金、なんで全部持っていくの?」とメールしたところ、返ってきたのは以下のような返信でした。

「愛していたお前のために、俺が出来ることを考えたら、お前を自由にすることだと思った。あのお金は、お前の幸せを願って、みんながくれたお金だろ。お前にとっての一番の幸せは、俺がこの家を出ていくことなんだから、それに使うのが正しいと思った」

いや、いや、いや。なんで、「お前のためを思って」みたいな話になっているの。そりゃ、金がないくせに浪費家の彼にとっては、引っ越しのためにコツコツとお金を貯めるのが苦痛であることはわかるけれど、だからって、「わたしのため」なんて言葉を大義名分にして、目の前のお金に手をつけるやり口はいかがなものか。

けれど、彼が居座っている限り、わたしは住んでもいないこの家の家賃の半額を毎月払い続けなくてはならないことを考えれば、思ったよりも早く出ていってくれたものです。それに、ここでまた下手に刺激して、女ひとり(と犬1匹)の家に襲撃されて暴れ狂われてはたまったものじゃないと、泣く泣く飲みこんだのでした……。

というわけで、今回は皆さまに何をお伝えしたかったかというと、とにかく縁の切れ目にあたっては、金銭トラブルにご注意くださいということです。

わたしの場合は、以前付き合っていた男性にお金を貸した際にきっちり返してもらえた経験が、アダとなった気がします。誰もが貸し借りに律儀なわけじゃないし、目の前にあるのがどんなお金であろうと、「お金が必要なのだから仕方ない」っていう理屈で手を出す人はいる。嘘だと思ったらグーグルで「私物 同棲 売られた」と検索してみてください。地獄が広がっています。

ちなみにサバゲ―の銃に関しては、後日返してもらいました。その際に「なんで人のものだとわかってて、持っていくの?」と尋ねたところ、「使わないと思ったから」と返ってきました。ツッコミたいことはたくさんありましたが、もう他人だったので、何も言いませんでした。

――次週へ続く

Text/大泉りか

次回は<「君を尊敬している」が口癖の恋人とわたしが別れた理由>です。
恋人との別れが泥沼化してしまった原因は、大泉さんの加害者意識であると同時に、被害者意識でもありました。元カレは、「君を尊敬している」が口癖であることとは裏腹に、束縛欲の強い窮屈な側面があったのです。