“女性らしい女性”を求めて束縛する彼氏

 学業と並行しつつ、おおよそ1年くらいは夜の蝶として夜の街に出ていたと思います。キャバクラ勤めがしっくりくるとは思えなかったけど、大きな不満もなかったわたしが、バイトを辞めることにしたのは、彼氏が出来たからでした。

 その相手は、友人の中学時代の同級生で、ほぼわたしと地元も同じ人でした。地元で開かれた飲み会で知り合い、なんとなく連絡先を交換して数回デートを重ねた後、付き合うに至ったのですが、この彼が、非常に束縛心の強い男性でした。
そして束縛心の強い男性のよくある特徴ですが、「自分は束縛しているつもりなんてない」と思い込んでることが厄介でした。

 この彼の束縛の根底にあるのは、“女性たるものは”という価値観でした。専業主婦のお母さまのことをとても誇りに思っていて、「女性は落ち着いて、しっかりと家を守るもの」だという前提があり、そんな彼の考える“女性らしい女性”とは、「家庭内で、生活を向上させる作業をすることを愛する女性」。簡単にかみ砕いていうと、ようは洗濯・掃除・食事の支度・縫物などを、心から喜びを持ってすることが出来る女性なのでした。

 なぜそんな男を好きになった……と思うかもしれませんが、これはおそらくわたしの病気というか、悪い癖なんだと思います。成長する過程で両親の教えや取り巻く環境から受けた「常識的であれ」という刷り込みが、時折「自由に生きたい」と思っている自分をぐらぐらと揺り動かす。
「恥ずかしいことはするな」「みっともない真似はやめろ」「女というものはそもそも」という外圧に反発しながらも、そういう、旧来的な価値観を持っている人を自ら近くに置いてしまうのです。そして「わたしって大丈夫ですかね」と問う。もちろん帰ってくるのは「大間違いだ」という答えです。

「わたし、夜のアルバイトしてるんだけど」「彼氏が出来たっていうのに、辞めないの?」
こうして、キャバクラを辞め、近所の喫茶店でバイトを始めたわたしは、すっかり家に閉じこもるようになったのでした。二十歳のその頃でした。

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Text/大泉りか

次回は《痴漢にあっても私のせい?彼氏の言いなりになっていた日々》です。

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