この映画の舞台は現代のニューヨーク。舞台女優を目指す女性・キャシーと小説家を目指す男性・ジェイミーの出会いから別れまでを描いた物語です。それを様々な歌と独創的な時間軸構成で描いていきます。
この冒頭の一文で「ネタバレじゃないか!」と思われるかもしれませんが心配無用。なぜなら本作は、二人が破局したところから物語が始まるからです。とは言っても、結末から少しずつ前に遡っていくという単純なものでもありません。
・女性・キャシーは、別れから出会いまでの時間を辿っていきます。
・男性・ジェイミーは、出会いから別れまでを時間軸通りに進んでいきます。
・その2つのストーリーが1曲ずつ交互に描かれいくのです。
ミュージカル映画として見事なのが、この2つの時間軸(気持ち)がぴったり合致するのが皮肉にも結婚式という「幸せの絶頂」であること。
やがて終わってしまう結婚生活の結末を知っているので、モヤモヤしかない残らないんです。
ここまで読むとこの映画はヘヴィー級で面白くないのか?と思われてしまいそうですが、そんなことありません!終わってしまう結婚生活をミュージカルで描くことで、気持ちをストレートにぶつけ合え、テンポ良く進んでいきます。
なんといっても、アナ・ケンドリックとジェレミー・ジョーダンの歌唱パフォーマンスが見事で、映画への引力がかなり強く、この世界観にのめり込んでしまいます。だからこそ、男女のすれ違いと破局を、否が応でも自分事として見つめられるのです。
鑑賞後には自然と過去の恋愛を見つめられているはず。思い出したくないこともあるかもしれませんが、過去の傷って「振り返りたくない」という言い訳が邪魔して反省できなかったりするもの。
ミュージカル形式にした意図はきっと、そんな傷ついた人の心を分かっているから。優しさに包まれながら、楽しんで自らの過去も振り返られる…非常に優れた映画に仕上がっています。