第87回アカデミー賞「作品賞」受賞で話題の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』。タイトルからは何の映画かよく分からないので軽く説明しましょう。
かつて「バードマン」というヒーロー映画で一世を風靡した俳優が、今となっては「元売れっ子」というおっさん役者に成り下がってします。
しかし、このままでは終われない!と奮い立ち、再起をかけてブロードウェイの舞台に挑みます。よって、バードマンが活躍するヒーロー映画ではありません。
ティム・バートン版の『バットマン』を演じたマイケル・キートンが主演で、彼自身もそのヒット作の後はパッとしない俳優人生を歩んでいました。彼自身と本作の主人公・リーガンの再起が被って見えるこのキャスティングがまた見事。
脇を固めるのも、アメコミ映画に出演していたエドワード・ノートンやエマ・ストーンらでキャスティングの妙が光ります。
ブロードウェイの出演に再起をかけていたリーガンですが、人生そんな計画通りにいかないもの。エドワード・ノートン演じるマイクの秀逸な邪魔っぷりで、余計にうまくいかない。
見逃せないのが、薬物中毒の娘を演じるサムの存在感。父親であるリーガンとの距離と、チャラ男俳優・マイクとの距離が絶妙で映画全体にスパイスを利かせます。
これらの俳優陣による演技合戦が見事な本作ですが、それを極限まで高めているのが2時間1カットの映像表現。クライマックス付近以外、ずっと画面のカットが切り替わりません。もちろん編集されているので一発撮りではありませんが、この1カット効果は映画への集中力を高めてくれます。
人生に切れ目がないのと同じように、切れ目なく作られた本作は、再起をかけるリーガンの熱意を最大限に高め、クライマックスでは「よっしゃー!!人生これからだ!!」と私たちに勇気も与えてくれる演出になっています。