イルミネーションにうるさい彼氏

やすこさん(東京都)
<エピソード>
 彼氏とクリスマスのイルミネーションを見に行けません。
 というのも、彼はクラブなどの照明演出をやっているので、職業柄、イルミネーションを見ると「ああ、このLEDは●●制御だね」「この光らせ方はセンスがない、△△で見た作品の方が面白かった」と専門家視点からのdisモードになってしまうからです。そう言われてしまうと、確かにちょっと光り方がダサいかも、と思えてきてしまうから不思議です。
 でも、私も彼氏と普通に新宿とか中目黒とかで、カフェラテ片手に「うわー綺麗だねー」ってやりたいんだけど!

 知識が豊富だと「素朴に楽しむ」ってなかなか難しいですよね。

 泣ける映画を見て、ただただ感動して余韻に浸ってる帰り道に、隣の男から、

「脚本のあの部分の書き込みが甘い」

とか、

「この伏線の回収が不十分だったよな」

とか言われたらほんとうにうんざりします。あ、僕のことです。ごめんなさい。

 とはいえ彼氏にしても、本心を封印するのはストレスが溜まります。自分の気持ちに嘘をついて「綺麗だねー」などと話を合わせていたら、無意識の中に、いらだちという名の怨霊が育ってしまうでしょう。

 やすこさんが送ってくれた短歌はこちら。

「付き合う」ってイルミネーションの配線を見て見ないふりすることじゃない?(やすこ)

 心のもやもやをただの体験談として短歌にするのではなく、説得力のある比喩にまで昇華させていて、お見事です。最初の5音はもうちょっとリズムのいい別の言葉に変えられるかもしれませんね。

 この件、お互いがハッピーになる解決策は「彼氏も納得する究極のイルミネーションを探し求めて二人で修羅の道を進み続ける」ではないでしょうか。

 彼氏もあなたも納得する完成度のイルミが、世界のどこかにはきっとあるはずです。二人の全精力を傾け、どこかにあるイルミの理想宮の発見を二人の共通のライフワークにしていきましょう。

 結婚式も日本ブライダル史の伝説になるぐらいにイルミで飾ってほしいです。目黒雅叙園をイルミで通天閣に変えてしまうとか。

 そのころには、イルミネーションに囲まれた生活こそ、あなたにとっての「普通のデート」に変わっていると思いますよ。

ふつうにはなれない君といる朝はきっといつかのわたしのふつう

 あ、将来生まれる二人の娘さんは「るみ」と「なりえ」で。