アイデンティティは分散したほうがいい
湯山: 「関係性」っていうとすごくコミュニケーション能力が高そうな言葉だけど、私は逆に、女性ってアイデンティティを預ける対象が内に向きすぎてるんだと思う。ほら、女の人の趣味って買い物か美容かグルメくらいしかないでしょ?
二村: ああ、ぜんぶ自分に還元されるものですね。だから結局、恋愛でしか自己肯定できなくなっていくと。
湯山: うん、アイデンティティの分散のしかたがヘタ。その点、男性のオタクは、バイクにしろアニメにしろプラモデルにしろ、対象が外にある。アイデンティティの分散投資ができているんですね。
二村: まあ、男性の場合、仕事や会社にアイデンティティを依存してしまっている人がほとんどですけどね。
いまの社会は男性に都合よく作られているから、男性のほうが自己肯定しやすいようにできているんですよ。
それを僕は男性特有の“インチキ自己肯定”と呼んでいるんですが。
湯山: “インチキ自己肯定”、いい言葉だよね。読んでてメモしましたよ(笑)。
二村: 男は、お金が稼げている、仕事がうまくいっている、会社に役職があるみたいなことで「とりあえずの自己肯定感」を得られるんですよ。
湯山: ところが、女は仕事や趣味ではなぜか自己肯定できない。結局、恋愛ができなかったら女としてダメってことにされちゃう。
二村: 「女」としてはよくても、今度は結婚できてなかったら「妻」としてダメ、子どもが産めてなかったら「母」としてダメ、さらに仕事でも自己実現できてないと…、っていう。女の人って、だいたい男より優秀なのに、なぜか自分に対して減点法で考えることが多い。
湯山: まあ、男も女もバランスが悪い。しかし、女の人は、外部へのアイデンティティ託しは本当に意識してやった方がいい。依存ではなくね。依存しちゃう女の人は、この男社会でもっと大変な事になっちゃって、高学歴エリート会社員女性に多いのだけど、褒められることだけを追い求めるこれまたヤヴァイタイプになってしまう。
Text/福田フクスケ
湯山玲子
著述家。出版、広告の分野でクリエイティブ・ディレクター、プランナー、プロデューサーとして活動。著作に『ベルばら手帳 マンガの金字塔をオトナ読み!』(マガジンハウス)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)など。月一回のペースで、クラシック音楽をクラブ仕様で爆音で聴く「爆クラ」を主宰。
(画像右:『快楽上等! 3.11以降を生きる』/著者:上野千鶴子、湯山玲子/発行:幻冬舎/価格:1,575円)
二村ヒトシ
アダルトビデオ監督。MotheRs・美少年出版社・欲望解放・レズれ!という4つのAVレーベルを主宰するほか、ムーディーズ、エスワンなどからも監督作を発売。また、ソフト・オン・デマンド制作部門であるSODクリエイト社の顧問(若手監督への「エロとは何か」指導を担当)にも就任。
公式サイト:nimurahitoshi.net
twitter:@nimurahitoshi/@love_sex_bot
(画像右:『すべてはモテるためである』/著者:二村ヒトシ/発行:イースト・プレス/文庫ぎんが堂/価格:700円)(画像左:『恋とセックスで幸せになる秘密』/著者:二村ヒトシ/発行:イースト・プレス/価格:1,260円)
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