
14年で私も社会もまじめになりました。
20年来の知人の編集者の口癖は「セックス」でした。
ふたりで(男同士ですよ)話していると「そうですかねセックス」などと言ってました。会話が途切れると「セックス」とつぶやく。本人に聞くと「困るとついセックスと言ってしまう」とのこと。
その話が面白かったのでスマホのメモ帳に「困ったらセックス」と書きました。あとでそのメモを見て、おれはいつこんなことを書いたのか、と焦ったことがあります。口癖がセックスの人もいなくなりましたね。
もともといなかったかもしれません。
昔のメモ帳には「無機物セクハラ天城越え」とも書いてありました。
これは覚えています。私の知人(セックスとは別の人です)は流れるように下ネタを言うので無機物相手でもいけるのか聞いたら、蛇口を見て「こんなに膨らんで…」といやらしく言いました。その無駄な才能に感動し、だったら電柱やガードレールなど無機物相手に言いながら峠を越えよう。そういう企画です。
でも、なんだかもうそんな企画タイトルを口にするのも恥ずかしくなりました。これは私が正気に戻っただけとも言えます。
そうそう、10年以上前に痔の手術をしたときのことも思い出しました。
あまりの痛さに医者に行ったところ、化膿していたため応急処置で切開することになりました。
耳からゴーという音が聞こえるぐらい痛かったのですが、そのときに医師に「ちょっと切っただけでもう溢れているよ」と言われて、激痛に耐えながら「そのセリフ、なんだかエロい……!」と思ったのを覚えています。
AMに関係ない話をつらつらと書いてしまいました。
最初にも書きましたが、AMが始まって終わるまでの14年で色気のある話がしづらくなりました。私が歳をとってリスクのある話題を避けるようになったこと、社会のゾーニングが進んだせいもあると思います。そんな洗練された社会の恩恵を受けながらも、たまに疑問を感じることもあります。もっと軽やかに色気のある話ができる方法があるのではないかと。
そういうときいつも思い浮かぶのはAMでした。AMはいつもスタイリッシュでユーモアとともに性を伝えていました。私が踏み込めないところでうまく踊っている。勝手にロールモデルにしていました。
だからもうひとつ書きます。
10年以上前、打ち合わせをハプニングバーでしたことがあります。打ち合わせ相手がバー店長と知り合いだからと言って連れて行ってくれました。乱交パーティーが行われていることもなく、ただ特殊な趣味の人が穏やかに飲んでいるお店でした。
店長は紳士的で、過去に行われたパーティーの写真を見せてくれました。店長たちがグラスを持って微笑んでいるパーティーの写真でしたが、ただ全員が裸でした。参加者の姿勢がよく、背筋が伸びていました。ネクタイだけ締めていたような気がします。
店内では裸の女性が逆さに吊るされはじめました。打ち合わせができる雰囲気ではないことに気づいたので帰ろうとしたところ、その逆さの女性と目が合いました。私が軽く会釈すると、その女性も会釈しました。でも逆さになっているので会釈というか、腹筋を使って軽く頭を持ち上げた格好になりました。逆さの状態での会釈はこうなるのか、と思いました。
後にも先にも逆さづりされた人と会釈したのはそのときだけです。
これからもこんなことがきっとあると思います。人に言いたくなるでしょう。
でももうすぐAMはなくなります。もうAMを参考にすることはできません。自ら勇気を出してお色気を伝えていきたいと思います。できるかなー!
Text/林雄司