恋愛は人類の進化がつくった最高の無駄!20万年前の恋愛観を専門家に聞いてみた

 私たちは基本的に、恋愛をして、生殖行為にいたり、子孫を繁栄させていく。このシステムはいつ頃から始まったのだろう? アウストラロピテクスにネアンデルタール人、人類の祖先たちは恋愛をしていたのだろうか? 『ヒトの進化 七〇〇万年史』などの著者・河合信和さんに聞いてみた。

最古の人類の恋愛事情を探る

出会いのカタチ 最古の人類 恋愛事情

河合信和さん(以下、河合) まず、最古の人類とはサヘラントロプス・チャデンシスというのですが、彼らは間違いなく恋愛はしていなかったと思います。

――あれ? 最古の人類はサヘラントロプスというのですね。昔、アウストラロピテクスと習った記憶があるのですが……。

河合 実は違うんです。アウストラロピテクスよりも古い種の発見が相次いだのが2000年頃。それより前の教科書にはアウストラロピテクスが最古と書かれていました。今では、現状最古であるとされているサヘラントロプス・チャデンシスなど、アウストラロピテクスよりも前に4種類ほどいたことがわかっています。

アウストラロピテクスは手あたり次第に生殖行為をしていた

――そうだったんですね。最古のサヘラントロプス・チャデンシスは恋愛していなかったとのことですが、じゃあアウストラロピテクスはいかがでしょう?

河合 おそらくアウストラロピテクスも恋愛はしていなかったと思います。アウストラロピテクスは類人猿の中では“乱婚”の形を取るチンパンジーに近いと言われているんです。

――“乱婚”……手あたり次第に関係を持つということでしょうか?

河合 そうです。乱婚とは、特定の相手とペアを組まずに手あたり次第種付けを行うシステムのこと。一方、例えばゴリラはオス1匹がメス5~6匹を囲ってグループを作るハーレム社会です。ハーレム社会では、自分のハーレムをほかのオスが奪いに来るので、戦って守れるように、ゴリラのオスの体はメスよりもずっと大きく作られています。

――チンパンジーのような乱婚だと、何かを奪ったり守ったりで戦う必要はないんですね。

河合 そうです。チンパンジーもアウストラロピテクスも、オスとメスの体の大きさにさほど差はありません。このことからも、アウストラロピテクスはチンパンジー型だったのではないかと言われています。ちなみに、チンパンジーのオスの睾丸ってすごく大きいんですよ。現代人の2、3倍はあります。乱婚社会の中でたくさん精子を作って自分のDNAを残すためです。

――じゃあ、もしかしてアウストラロピテクスの睾丸も大きかったのでしょうか?

河合 何しろ化石として残らないので想像するしかないんですが、その可能性はあります。ただこの頃から一夫一婦制だったという見解もありますから、そうだとすると現代人並みの大きさだったこともあり得ます。