パリと東京のクリスマス
私が東京にいた頃。
「外苑前のイチョウの紅葉を今年は見に行けるかな?」
と考えていたら、いつのまにか秋が終わっていた。
そして、気がついたら街はクリスマスのイルミネーション一色に。
ギラギラしたLED電気を街中にちらされると、ただでさえ師走で忙しいのに、追い打ちをかけて時間に迫られる気がしたものだ。
なにより、シングルでいることが異常に人肌恋しく感じられる時期でもあった。
フランスに住みはじめてみると、東京とはまた違ったクリスマスイルミネーションが街を飾ることを知った。
あくまで、イルミネーションは街の飾り。
光は街を灯す脇役でなくてはならない、という風に見えるのだ。
パリの通りを飾るイルミネーションの電球は、ここ何年も同じものを使いまわしている感じが否めない。
ほこりがかったような電球で、ぼんやり照らされる街は、暖かく感じられる。
フランスのクリスマスは家族の集まる一大イベント。いまでこそ、フランスに家族のいる私だが、パリ移住して一年目のクリスマスはひとりぼっちだった。
クリスマスの日、街に出たら「何事か!?」と思うくらい日中に人が出歩いていなかったのだ。
お腹が減ったから何か食べようと思って外出したのに、近所のマクドナルドも開いていない。しょうがなく、かろうじて開店していたチェーンのスーパーマーケットで冷凍ピザを買って帰った。
フランスで1人クリスマスを過ごすのは、東京でシングルで過ごすより、ずっとずっと孤独であることを感じさせられた。
人肌恋しいなんてもんじゃない。世界から人が消えて自分1人だけ隔離されてしまったような「1人ぼっち」感。
12月のパリでは太陽が顔を出す時間が減り始め、グレー色の空が頭上についてまわるうっとおしさがある。
パリジャンたちは、着回しのきくグレーや黒のコートを着はじめる。
一年でもっとも重力を感じる時期かもしれない。
だから、パリジャンたちが一番機嫌が悪くなる時期でもある。
Text/中村綾花