「あり得ない」と感じた彼の価値観に歩み寄れるか

あなたは親御さんの「またお礼もせずにフラッと帰られちゃうんだから嫌だよ」という、犬を預かれないという言葉を彼にそのまま伝えたと書かれています。
彼は「わかった!」の一言で納得して終わらせたようですが、わたしだったら「いやいや! なぁーんにもわかってなくなくない?!」と詰め寄っていたかもしれません。
彼の「わかった」という台詞は「オッケー! 預かるのは無理ってことね!」と、断られた事実を了承したに過ぎなく、親御さんの言葉の真意である「預からないのは、彼が非常識な人間だと感じたから」という理由の部分は理解していないように感じました。
親御さんが抱いた印象、あなたがほんとうに伝えたいことに関しては、ほんとうに彼は何もわかっていないでしょう。

この一連のやりとりであなたは彼に対して「あり得ない」と感じたにもかかわらず、それを“価値観の違い”と表現することに、少し違和感があります。
そもそも、恋人同士または夫婦関係における価値観の違いというのは、お互いが「この選択が自分たちにとってベターでしょう」と考えていて、そこにズレが生じているため生まれるのだと思います。
例を挙げると、以前お答えした、結婚前に同棲したほうがいいと考えている彼と、結婚前に同棲はしないほうがいいと考えている彼女の相談です。
結婚前に同棲したほうがいい派の彼は「結婚という大きな決断の前に、お互いの習慣を知っておいたほうがいい。そのほうが、もし上手くいかなかったときに引き返しやすい」と考えていて、反対に結婚前に同棲しないほうがいい派の彼女は「同棲してしまうとそのままズルズルと結婚が先延ばしになってしまうと思う。結婚という覚悟をしたうえで一緒に暮らすべき」と考えていました。
どちらも、これまでの経験や周囲の話から、自分の考えこそが“お互いにとって最良”だと思っていたからこそ生じた価値観の違いでしょう。
もちろん根底には自分の幸せのためという理由はあるのでしょうが、お互いのための主張であることは容易に感じ取れます。
でも、彼の「正式に結婚しない限りは、相手の親には挨拶もお礼もわざわざ言わなくていい」という主張は、いくら想像してもあなたたち二人の関係にとってのメリット、そして相手を慮るがゆえの言葉と捉えられる部分が見つからないのです。
もしかしたら彼なりの信念や信条はあるのかもしれませんが、客観的にはただ億劫だからと面倒事を避けているようにしか見えません。

相談文にも書かれている通り、これまでのお付き合いでは喧嘩しながらもお互いの妥協点を見つけて上手くやってきたんですよね。
他に例が書かれていないのでそれらがどういったものかは推し量れませんが、きっとお互いの中間地点を見つけるために、様々な場面で自分の気持ちを伝えて、相手の考えを聞いて、歩み寄ってきたのでしょう。
それは、とても素晴らしいことだと思います。
価値観を擦り合わせる作業の中で、きっちりとした中間地点が見つからず、結論が片方の意見に寄ったとしても、譲ったほうは「冷静に考えたらそっちのほうがいいかも」「そんなに言うのなら、自分はそこまでこだわりがないから譲ってもいいかな」と、納得する部分があるはずです。

今回の件では、彼はかなり頑なで、過去にも喧嘩に発展したにもかかわらず歩み寄る素振りは見せたものの、実行には至っていません。
しかし、挨拶やお礼などは、社会生活においてかなり重要視される部分です。
「自分の本心はさておき、しておいたほうが人間関係が円滑になる最低限のこと」「やっておいて得こそすれど、損はしないこと」を否定・拒絶するのは、彼によほどの強い意志があると感じました。
そんな覆すことが非常に難しい彼の価値観に、あなたはどこまで歩み寄れるのでしょうか。
「あり得ない」と感じた彼の価値観に、納得する部分を見出せそうでしょうか。
今後も彼と付き合っていくかどうかは、そういった彼の考えにどこまで歩み寄れるか、この件に関して歩み寄ろうとしてくれない彼を受け入れられるか、彼が周囲に悪印象を与えても気にせずやり過ごしたり、間に入って緩衝材としての役割を担えるかといった部分を主軸に考えてみることをおすすめします。