「精子と卵子について知ろう!」大人の性教育

――入澤さんはサービスを運用する中で、世間とのギャップを感じることはありますか?

入澤

男性妊活の認知はまだまだ足りないと思っています。興味を持っていたとしても、知る機会がなかなかない。だから、男性にも不妊の原因があるということをもっと正しく伝えていきたい。そして、女性の身体のことも男性に知ってほしいです。たしかに女性自身も身体のことをオープンにしづらいだろうから、男性も触れづらいと思うんですが、たとえば生理のメカニズムを知っていれば、PMS が重い女性への理解も高まるじゃないですか。

西

たしかに。生理のことにまで話が及ぶには、そもそもパートナーはどんなことが好きで、どういう価値観を持って、どんなライフプランを持っているのかを深く知ろうとすることも大切だと思います。でも、私のパートナーが『生理ちゃん』の映画を観てから、「生理、辛くない?」と聞いてくれるようになったんですよね。そういったきっかけは必要なのかもしれません。

入澤

妊活についても女性が男性に教えるという構造自体が間違っているし、本来妊活は一緒にやるもの。だから、もっとフラットに身体の違いについて話し合える方がいいですよね。分け隔てなくていいのになと思います。

――若い世代に伝えるために、今後どういったことが必要になると思いますか?

入澤

モノを作ることがゴールじゃなくて、『Seem』を通して男性の妊活という文化を築きたいです。「面白いツール」ができたという一過性のものではなく、どこで作ったら話題になるか考えた時に、名の知れた企業でやる必要があると思ったんです。リクルートならサービスを始めた意図も取り上げてもらえますし、そこで不妊の課題もお話できたら「男性妊活」の知識や意義が広まりますよね。
先日、YouTuberの東海オンエアさんが動画の中で『Seem』を使ってくれたんですが、視聴者が興味本位でも良いので『Seem』を使ってくれるといいなと思っています。若い頃に自分の状態を知れると、その後の行動が変わってきますから。

――おふたりが考える今後の課題は何ですか?

入澤

男性が不妊について知るためのコミュニケーションの場をどう設けるかが課題ですね。昨年は渋谷区と協力して、“いい夫婦の日”に婚姻届を提出したカップルに『Seem』をプレゼントする運動を行いました。今は結婚しても、しばらくは夫婦の時間を大切にしようと思っている人が多いので、最初に自分の状態を知ってほしくて。今はそういった接点をつくることに注力しています。

西

男性向けの妊活セミナーはまだハードルが高そうだけど、クリニックの体外受精セミナーは大盛況です。カップルで来ている方が7~8割ですし、参加していた男性もかなり前のめりに質問している印象があって、そこにはギャップを感じました。

入澤

一緒にピンクリボン運動みたいなのができればいいですよね。

西

「精子と卵子について知ろう!」みたいなイベントやりましょう(笑)。大人の性教育が、今改めて必要だなと思っています。

◇◇◇

まだ見ぬ未来を想像する上で、私たちに付きまとう不安。それでも、産婦人科での検査や『Seem』で現在の状態を知り、卵子凍結などの選択肢も頭に入れておくことで、可能性は無限に広がります。

大切なのは、自分で立てたライフプランに捉われすぎないこと。理想通りじゃなくたっていい。今回のイベント参加者のように、女性たちが何度も新しいライフプランを描けたらいいなと思いました。

Text/苫とり子