ゲストはDPZ・林雄司編集長
第2部は、おもしろ系サイトの最古参「デイリーポータルZ」の編集長、林雄司さんがゲストとして登壇した。もはや「ウェブのおもしろを司る者」と言っても過言ではない人である。
林さんはAM編集部と、「ウェブの人って、会ってみると良い人だったりするけど、僕たちは会うと皮肉屋ですよね」と共感し合っていた。 私も皮肉屋だし、もっというと、ネットでよく目にする「直接会って話したこともないのに批判するな」みてえな訳の分からん理屈が大嫌いだ(たとえオフラインのテメエが良い奴だろうとそれが「表」とは限らねえし、俺が嫌いなのはオンラインのテメエなんだから関係ねえだろと思う)。だから、みなさんの性格が悪くて、私のなかで好感度が爆上がりした。
しかし、だからといって、「悪いメディア」「お金を稼ぎたい」「叩かれたときの対処法」といった、書けない面白い話ばかりしないでいただきたい。どれもツイート禁止だ。悪口をエンターテイメントに昇華させられると、私のように苦しむ人間もいる。
林さんが好きなAMの記事
林さんは、好きなAMの記事として、「石原さとみになりたい!」と、「騎乗位下手あつまれ!一生使える4つの基本的な動き方」を挙げていた。後者は、2014年に書かれたにもかかわらず、今なおAMのセックスカテゴリ記事ランキングでトップに君臨し続けるモンスターである。
特に、Betsyさん直筆のイラストが好きらしい。絶対ペイントで描いただろ、というこのタッチが、エロくなりすぎずちょうどいいとのこと。
ちなみに、「林さんが最近やってる『#CGで再現すると事件っぽくなる』を、体位の説明に使うのもアリですね」という話もあった。
近所のグラウンドで棒高跳びの練習をやっているので通るたびに柵越しに見てる。いつか「やってみます?」と言ってくれないかと思っているが、今のところ言われない。#CGで再現すると事件っぽくなるpic.twitter.com/Huoc9mMVul
— 林 雄司 (@yaginome) 2018年2月7日
林さんは「いや、それでもエロすぎますよ」と言っていたが、OLIVIAさんの過去の連載「体位の新48手!愛と快感のLOVEポジ」は、ちょうどこんな感じである。これはこれで、シュールな良さがある。
AMは上野千鶴子みたいなサイト
林さんは、「AMのことどう思ってるんですか?」という編集部からの質問に、「上野千鶴子みたいなサイトですよね」と即答していた。これは鋭い指摘である。
上野千鶴子先生は、日本で最も有名なフェミニストのうちの1人だ。ゆえに敵も多い。けれども、東大社会学研究室の私からすれば、東京大学名誉教授である上野先生にたとえられるだなんて、これほどうらやましい褒め言葉もない。
林さんは、特に金井編集長の固定ツイートのことを褒めていた。
たまに誤解されるんですが、AMではビッチになれと言っているわけではなく「清楚じゃないと」「都合のいい女やるやつは全員さみしい」「条件いい彼氏と結婚する女が勝ち」みたいな勝手な設定をひとつひとつ燃やして、深夜に悩んで検索してくださるような女の人の選択肢が広げられたらなーと思ってます
— 金井茉利絵(AM編集長) (@kanaimarie) 2017年5月12日
一枚岩ではない、内戦だらけのフェミニズム思想。そのすべての流派に共通するのが、この「女の人の選択肢を広げる」という発想である、と言っていいだろう。それを堅苦しくなく、「おもしろくなきゃいけない!」という態度でやってみせるのがAM流の闘い方だ。ここに、上野千鶴子先生のキレ味鋭いパワフルな筆致で書かれた“おもしろい”本の数々を思い出す……と言うのは、言いすぎだろうか。
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以上、内緒話や下ネタのなかに、恋愛メディア「AM」運営のプライドやポリシーが見え隠れするトークイベントだった。
しかし、これでもまだ、編集部のお利口さんな一面にすぎない。このレポートを面白いと感じても、万が一つまらないと感じても、外に出せる3割の内容だけで判断するのは無茶だ。どちらにせよ、もしまたイベントがあるのなら、直接足を運んでみなければ、あなたは損をする。
Text/服部恵典