すべての「童貞」へのエール
さあ、1発目の童貞の疑問と、その回答はこちら。
Q.僕のことを好きになってくれる女の子ってどこにいるんですか?
A.いません
っかァー!効く効く!このdisを待っていた。良薬口に苦し。甘っちょろい夢をぶっ潰すのは編集部の厳しい優しさだ。ラップで言うと、「童貞をOKと肯定はしねえ モテはNo pain, No gain」である。
アドバイスも実に具体的だ。
Q.デートってどう誘ったらいいですか?
A.「中野に熟成肉を食べに行かない?」
明日から熟成肉を出す中野のお店が童貞で溢れかえってさぞ忙しくなるにちがいない。「ツイテル」さん、「魚せん」さん、「root」さん、バイトのシフトを組みなおしましょう。肉とちがって童貞は寝かせても旨くならないのがつらいところだ。寝たことがないから童貞なのだが(ウマい)。
それから、質問のチョイスもすばらしい。特に、「Q.地下アイドルってヤレるんですか?」なんて最高だ。この疑問を口にした童貞が、実際に編集部の周りにいたということを想像すると、切なくも愛おしい。
そう、デートの誘い方もおぼつかないのに、「地下アイドルぐらいだったら応援してるうちにイケんじゃねえか?」と、持て余すほどの妄想を抱く。それが童貞だ。答えはもちろん「A.ヤレるわけねーだろ」である。
回答担当者によって個性があるのがおもしろいが、テレビ出演する金井編集長の答えには「流石」の一言である。
Q.OKサインって本当にあるんですか?
A.野球かよ
Q.ビッチとは付き合いたくないので見分け方を教えてください
A.ビッチと付き合えよ
この切れ味だ。本多忠勝が愛用した槍「蜻蛉切」を思わせる。この槍の名は「トンボが飛んできて槍先に止まった瞬間、真っ二つに切れてしまった」という逸話に由来するが、この本もふらっと買った童貞をスパッといく。清楚でフェミニンでありながらそこはかとないセクシーさを併せ持つファッションは俗に「童貞を殺す服」と呼ばれるが、本当に童貞を殺す装備とはこういうものをいう。
* * *
前回の紹介記事の繰り返しになってしまうが、本書が言う「童貞」とは「性交経験のない男性」のことではない。本来「童貞」とはカトリックの修道女、つまりは処女を指す言葉であったからだ。
しかも、『童貞本2』の23ページにあるように、「童貞は終わらない」。「ネバーエンディング童貞」である。人々の心の中に住む、たかだかセックスしただけではいなくなってくれない「ちっちゃい童貞」に向けて、この本は書かれているのである。
そして、この本のメッセージを誤解してはいけない。「うざい男あるある」として楽しめるのはその通りなのだが、編集部は「童貞」たちを笑いものにしたいのではない。立ちあがれ、歩みだせ、飛びたて。読んでいるとそんなエールが聞こえてくるかのようである。
金井編集長は「Q.どうしてもセックスしたくなったときどうしたらいいですか?」という疑問に「A.いいよいいよ!その調子!」と答える。本書の本質は、「激怒」ではなく「激励」。この本を買った瞬間、あなたは、手を取って外へと連れだす厳しい師、あるいはここから始まるアドベンチャーのための最初の地図を手に入れる。
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