忘れた頃にひょっこり希望が見えたりする

『灯台へ』に登場する画家のリリーは、相反する価値観を持つラムジー夫人の肖像画を描こうと、第一部から試みている。私が好きなのは、その肖像画が完成に向かうのが、十年の時を経た第三部であることだ。リリーは十年の間に起きた様々な出来事を加味し、ラムジー夫人の人生を捉え直す。そして最後に、「わたしは自分のヴィジョンをつかんだわ(p.267)」と、満足気に筆を置く。もちろん、第三部ではラムジー夫人は亡くなっているわけだけど、「今」目の前にあるものより、時間と距離を置いて捉え直したもののほうがかえって真実に迫れたりすることってあると思う。

小説の話と合わせて私が伝えたいのは、決して自分の人生に悲観的にならないでほしいということ。生きていればいろいろな抜け道があるので、必ずしも世間で言われているイメージが正しいわけではないということ。それから、「今」絶望しているようなことも、忘れた頃にひょっこり希望が見えたりするということ。

『灯台へ』を読みつつ時の流れをゆっくり感じると、自然とそんなふうに思えてくるのだ。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

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チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはずです。